殺し屋×JKの恋
2,助けてもらえました
《ま、待て、ジョット! アレは……そ、そう、とっておきの場所に隠してある!》
《どこに隠した》
イタリア人さんは私の存在を忘れたように、体を入り口のほうに向けて、すこし中腰になりながら両手を前に出している。
コツ、コツ、とゆっくり足音をひびかせてピストルを構えたお兄さんが近づいてくると、イタリア人さんはジリジリ後退して、私の視界のはしへ消えた。
“カリアファミリー”……ファミリーって、マフィアのこと?
《お、俺だけが知ってる場所だ! 俺を消したら、二度と見つからないぞ!》
《俺のターゲットは
《ぐっ……ちくしょう! 金も受け取って、あとは姿をくらますだけだったのに!》
イタリア人さんの大きな声が聞こえた直後、パァンと銃声が空気を切りさく。
ピストルを構えていたお兄さんは、腕まくりをしたYシャツの肩から下げているショルダーバッグに、くるりとまわしたピストルをしまった。
イタリア人さんの声は……もう、聞こえない。
殺し屋、ジョット。そう呼ばれていたお兄さんは、私に顔を向けて、コツコツとこっちに近づいてくる。
わ……私も、殺される……!?
あれ……? と思ったとき、背後からお兄さんに声をかけられる。
《……ここで見たことは、誰にも言うな》
ふっと、鉄骨にしばりつけられていた腕がロープの食いこみから解放され、
ポカンと目を開けて
ふわりと香るシトラスの匂いに気を取られているあいだに、頭のうしろでゴソゴソとお兄さんの手が動き、目の前に開いた胸元と のど仏がせまった。
《ここで、聞いたこともだ》
するどい つり目もよく見れば、明るい茶色の瞳がきれい……。
なにも言えないまま
《あー……ここで、見たことは》
こまったように眉根を寄せながら、ジョットさんは言葉に合わせて手を広げたり、自分の目を指さしたりする。
最後に、人差し指をくすんだ赤い唇の前に立てながら、《言うな》と口にした。
はっ……!
《あ、わかります、イタリア語! 大丈夫です》
ずっとだまってたから、言葉が通じないと思われたんだ。
あわててイタリア語で答えると、ジョットさんはすこし目を丸くして、胸に手を当てながら、ホッとしたように息を吐き出す。
え……かわいい? もしかしてこのお兄さん、かわいい?
《……ここにいた理由は知らないが、無事に帰してやるから、ここで見たことも聞いたことも、墓まで持って行け》
あらためて、目を見つめながら彼に口止めされ、私は思った。
ジョットさん……殺さずに帰してくれるなんて、いい人……!
(※説明しよう!
《はい!》
コクコクと うなずいて答えたあとに、あのイタリア人さんはやっぱり死んじゃったのかな、と気になって、すこしうしろを見てみる。
すると、人の姿が視界に映る前に、片手で目元をおおい隠された。
《女が見るものじゃない》
ぶっきらぼうでありつつも やさしい言葉に、胸がキュンとする。
ジョットさん、やっぱりいい人だ……! 好き……っ!!
(※説明しよう! 穂波は命の危機を経験し、以下
私はくるりと顔の向きをもどして、無表情のジョットさんを見つめた。
《あの、あぶないおクスリを探してるんですよね?》
《……なぜ、それを知っている》
ジョットさんは眉をひそめる。
《私、イタリア語がわかるので、あの男の人と日本人のお兄さんがおクスリについて話しているのを聞いて、捕まってしまって……》
《……そうか》
ため息をついて、ジョットさんは私のうしろに視線を向けた。
ついつい視線の先を追って振り向きかけると、またジョットさんの手に目元をおおい隠されて、胸がキュンとする。
《アレはうちのシマに流れたのを、カリアファミリーが回収したものだ》
《……ジョットさんもカリアファミリーの人、なんですか?》
顔の向きをもどしながら聞けば、ジョットさんは《あぁ》とうなずいた。
《あの男が処分前のクスリを盗んで、日本に売りに来たのを止めるために……俺が来た》
そうなんだ……とあごに手を当てる。
でも、あのおクスリはもう、売られちゃったんだよね? スーツのお兄さんに。
ジョットさんのお仕事的に、やっぱりお兄さんの手に渡ったあのおクスリは回収しに行くのかな?
そこまで考えて、私は《あの!》と声をかけた。
《私、ジョットさんのお手伝いします!》
《……なに?》
《私、イタリア語がわかるし、取り引き相手の人の顔も見たし、すこしは
ジョットさんともっと一緒にいたいもん、この機会を
笑顔で自己PRをすると、ジョットさんは眉根を寄せただけじゃなく、口をへの字に曲げた。
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