夢の世界で
もう、疲れたんだよな。
俺はさ、どうしても両親の仲を取り持ちたかった。
理由なんて聞かれても、それが
でも、俺がいくら頑張ったって、2人の仲がよくなるなんて、望む結果は出なくて。
気づいてしまったんだ。
俺が何をしたって、その壁がある限り現実は変わらないってことに。
あれは、絶望だったのかな。
それとも、冷静に納得してたのかな。
……全部、どうでもよくなった。
親戚が諦めきってて、積極的に協力してくれなかった理由が分かったよ。
だって、無駄なんだ。
何をしたって、無駄なんだ。
頑張れば頑張るほど、1人で踊り狂う
全員と縁を切って、遠くに行きたくなった。
「だから、ここにいらっしゃったんですね」
あぁ。
って言っても、説明された今だってよく分からないんだけど。
この場所のこと。
「無理もありません。現実で生きる人間の皆様には、ただ眠りについたときに見る
自分は人間じゃないみたいに言うんだな。
まぁ、なんか分かるよ。
ここは変だ。
感覚ははっきりしてるのに、どこにいるか分からない。
まるで起きたまま夢でも見てるみたいだ。
「ふふ……
なんだ、これ?
紫色の、ビー玉?
「口の中に入れると、ゆっくりと溶ける性質を持っています」
ふぅん……チョコか
「あぁ、そうでした。そちらでは飴と呼ばれるものに近い食感をしていますよ」
へぇ。
これはいくらなんだ?
「対価は必要ありません。ここへ来た人間の方には、サービスの品を提供する。ここはそういう場所なのです」
サービスねぇ……。
「お客様は対価を支払うことに慣れていらっしゃるようですね。では、お客様がご自宅へ帰られた際に5円を
5円?
たったの?
「はい」
……まぁ、それなら。
もらうよ。
「ぜひ。そちらの品には、心が
リラックスか。
今の俺には、必要なものかもしれないな……。
いただきます。
「どうぞ。ところでお客様、先ほど聞かせていただいたお話ですが」
ん、なんだ?
「“頑張れば頑張るほど、1人で踊り狂う
あぁ。
そうだろ。
今まで俺がしてきたことは無駄だったんだ。
なんの意味もなかった。
現実は、変わるわけがないんだから。
「現実は、そうだったかもしれません。ですが、お客様は
……あんた、俺のことなんて知らないだろ。
「えぇ。お客様がとても頑張っていたことだけ、お
……一体何が?
「お客様が、
……やっぱ、あんたは分かっちゃいない。
俺がやったことは無駄だったんだ。
「お客様が望む結果が出なかったから、でしょうか? 世界とは、雑多な生き物が作り出すもの。個人に優しいことばかりではありません」
……分かってるよ。
「人間とは不思議な生き物です。世界が1人に優しくなくても、他の誰かがその1人を想えば、全て
全て、ってのは言いすぎじゃないか?
「ふふ、時と場合によるかもしれませんね」
あんたなぁ……。
「失礼しました、適当なことを言いたいのではないのです。
私達のように?
「あぁ、お気になさらず。お客様はご自身がなさったことが全て無駄だったと思っていらっしゃるのですよね」
……あぁ、そうだろ。
「望んだ結果が
そんなの、
「いいえ。ただの事実ですよ。お客様は素敵なことをしたのです。価値がなかったと思っているのはお客様だけ」
あんたに、何が分かるんだ……。
「お客様が素晴らしく素敵な頑張りをされた、
……
俺は、結局何もできなかったんだ……。
どうすることも、できなかったんだ。
「目の前にありますから、気にしない、ということは難しいかもしれません。ですが、結果にばかり
……大切なものって。
「お客様ご自身です。そして、お客様がなさってきたことも同じく」
……。
「無駄などではありません。お客様のご両親が、
……あぁ。
「そうしようとするのは、“
俺……。
「人のために、考え、時に行動を起こす。それは、素晴らしく
……そうするのは、俺だけじゃないよ。
「けれど、お客様“も”そうした。間違いなく、お客様がなさったことです。私には、頑張り疲れて、くたびれたお客様が見えます」
……。
「同時に、とても輝いているお客様が。素晴らしく、素敵で、
……あぁ、見ないでくれ。
人前で泣くなんて……。
「ふふ……私は人間ではありませんから。疲労が全て溶けるまで、ごゆっくり
ありがとう……。
あんたに会えて、よかった……。
「私も、お客様に出会えてよかったです」
心が
それとも、人間じゃないというあの人の言葉に救われたのだろうか。
……いい結果には、ならなかった。
それでも、俺の頑張りがいくらか
意識が
記憶が薄れる。
ただ心地よい、胸の温かさだけが胸に残って……。
「……行ってしまわれましたね。ご縁、
小鳥のさえずりが聞こえる。
昨日は、疲れて寝たはずなのに……。
なんか、一晩寝たらすっきりしたな。
「ふわ~ぁ……起きるか」
俺は体を起こした。
(※無断転載禁止)
この物語は、別名義でノベルゲームとして作った物語を、小説版として改変したものです。
→ノベルゲーム版「チルする5分」