(うら)スーパーへようこそ ピカピカうさぎに(つか)まったら、人形(にんぎょう)に?

7,()()勇気(ゆうき)

(やく)2,100()()()わるまで(やく)(ぷん)


 永亜(とあ)がバックヤードへ()けこんできたのは、乃花(のか)たちがペットボトルのジュースを半分(はんぶん)ほど()んだころだった。
 ドンッと(とびら)体当(たいあ)たりするようにバックヤードへ(はい)り、すぐに背中(せなか)銀色(ぎんいろ)(とびら)()めた永亜(とあ)は、「はぁっ、はぁっ」と呼吸(こきゅう)(あら)げる。


「せ、瀬戸川(せとがわ)くん!? 大丈夫(だいじょうぶ)!?」

永亜(とあ)くん!」


 乃花(のか)たちはあわてて()()がって、永亜(とあ)のもとに()()った。
(ど、どうしたんだろうっ、ピカピカうさぎに()いかけられたのかな……っ!?)
 永亜(とあ)(こた)える()わりに片手(かたて)()げて、(さき)(いき)(ととの)える。


「はぁ……大丈夫(だいじょうぶ)だ。(かえ)(みち)()つけた」

「えっ!?」

(かえ)(みち)……もしかして、()(ぐち)が?」

「そうだ。()(ぐち)(そと)が、現実(げんじつ)のスーパーにつながってた。あそこから()れば、(もと)世界(せかい)(かえ)れる」

「……るーちゃんたち、(かえ)れるの?」


(かえ)れる? (もと)世界(せかい)に?)
 乃花(のか)()(まる)くして、(むね)()さえた。


「そうだよ、來璃(らる)(ぼく)たち、(いえ)(かえ)れるんだ。……永亜(とあ)くん、ありがとう。(あぶ)ないのに、1人(ひとり)()()ってきてくれて」

(おれ)がやりたいことをやっただけだ。……あいつが(おれ)()ってきたかもしれないから、(すこ)()ってから()(ぐち)()こう」

()かった」


 男子2人(だんしふたり)会話(かいわ)()きながら、乃花(のか)視線(しせん)()とす。
本当(ほんとう)に、(かえ)れるんだ……! よかった、よかったぁ……っ!)
 乃花(のか)はギュッと()をつぶって、()きそうになるのをこらえた。
 そんな乃花(のか)()を、來璃(らる)がキュッとにぎる。


「お(ねえ)ちゃん」

來璃(らる)ちゃん……(わたし)たち、(かえ)れるんだって。よかったね……!」


 乃花(のか)がかがんで、來璃(らる)目線(めせん)()わせながら(わら)うと、來璃(らる)は「うん」とほほえんだ。

 乃花(のか)たちが(のこ)ったジュースを、永亜(とあ)(あたら)しく()()したスポーツドリンクを()んで時間(じかん)()いたあと……4(にん)(とびら)(そと)様子(ようす)をうかがった。


大丈夫(だいじょうぶ)、あの()ぐるみはいないよ」

「それじゃ、()くか」

「う、うん……」

來璃(らる)、おいで。おんぶしてあげる」

「……うん」

乃花(のか)ちゃん、この懐中電灯持(かいちゅうでんとうも)っててくれるかな? (ぼく)()がふさがっちゃうから」

「あ、はい……っ」


 那成(ななる)がしゃがんで、その背中(せなか)()きついた來璃(らる)()()げる(あいだ)乃花(のか)(むね)(まえ)で、(わた)された懐中電灯(かいちゅうでんとう)をにぎりしめた。
(かえ)れる……でも、この(そと)って、ピカピカうさぎがいるんだよね……? 安全(あんぜん)なのは、ここだけ……)
 乃花(のか)はゴクリとつばを()んで、(すこ)しだけ(ひら)かれた銀色(ぎんいろ)(とびら)()る。
 永亜(とあ)()懐中電灯(かいちゅうでんとう)()らされた(さき)には、(たお)れた人形(にんぎょう)姿(すがた)()えた。
人形(にんぎょう)……ピカピカうさぎに(つか)まったら、(わたし)蕗咲(ろさ)ちゃんみたいに……)


()くぞ」


 永亜(とあ)(とびら)(おお)きく()けて、最初(さいしょ)にバックヤードの(そと)()る。
 その(つぎ)に、來璃(らる)をおんぶした那成(ななる)()ていき、乃花(のか)もバックヤードを()ようとした。

 しかし。


「あ、あれ……?」

乃花(のか)ちゃん?」


 乃花(のか)はバックヤードの(そと)()()せず、(まゆ)()げた。
(あし)(うご)かない……!? な、なんで……っ)
 いくら(あし)()つめても、乃花(のか)(あし)はふるえるばかりで、(まえ)(うご)こうとしない。
 ()(かえ)った永亜(とあ)は、乃花(のか)様子(ようす)()ると、乃花(のか)(まえ)()()()した。


土谷(つちや)(こわ)くても、(いま)勇気(ゆうき)()すときだ。そこから()なきゃ、いつまで()っても(もと)世界(せかい)(かえ)れないぞ」

「せ、瀬戸川(せとがわ)、くん……」

乃花(のか)ちゃん……大丈夫(だいじょうぶ)だよ。みんな、一緒(いっしょ)にいる。1(にん)()いて()ったりしないから」

那成(ななる)さん……」

「お(ねえ)ちゃん……いっしょに、(かえ)ろ?」

來璃(らる)ちゃん……う、ん」


 乃花(のか)(ちい)さくうなずいて、永亜(とあ)()をにぎる。
 そして、ギュッと()をつぶりながら、()()かれるままに一()(あし)(まえ)()した。
(かえ)る……(もと)世界(せかい)に、(かえ)るんだ……っ!)
 決意(けつい)(むね)()めた乃花(のか)は、永亜(とあ)()(はな)れていくと、懐中電灯(かいちゅうでんとう)両手(りょうて)でにぎりこんで(まえ)()る。


「こっちだ」


 永亜(とあ)先導(せんどう)し、來璃(らる)那成(ななる)()(なか)乃花(のか)最後(さいご)についていく(かたち)で、4(にん)懐中電灯(かいちゅうでんとう)()らされた店内(てんない)(ある)いていった。
 (ゆか)(ころ)がる人形(にんぎょう)をよけながら、1つ()商品(しょうひん)だなの(あいだ)(とお)()けようとしたとき、ピカピカうさぎが4(にん)(まえ)(ひだり)横切(よこぎ)っていく。


「「!!」」

 乃花(のか)はとっさに両手(りょうて)(くち)()さえて、悲鳴(ひめい)がもれないようにした。
 バクッバクッと(おお)きな(おと)()てる心臓(しんぞう)緊張(きんちょう)して、()(あせ)背中(せなか)(つた)う。
 ピタリと(かた)まった4(にん)(まえ)を、ピカピカうさぎは素通(すどお)りして、(はい)(くち)があるほうへ()かっていった。

 永亜(とあ)(しず)かに(いき)()きながら、那成(ななる)たちのほうを()(かえ)って、()(まえ)通路(つうろ)(ゆび)さす。
 (くび)をかしげた永亜(とあ)様子(ようす)から、“このまま(すす)むか?”と質問(しつもん)する意図(いと)(かん)()った那成(ななる)は、視線(しせん)()としてから、ひとつ(ひだり)通路(つうろ)(ゆび)さした。
(えっ……ピカピカうさぎが()ったほうに(ちか)づくの……!?)
 乃花(のか)(おも)わず(まゆ)(くち)のはしを()げてしまうが、永亜(とあ)はうなずいて、(まよ)いなくひとつ(ひだり)商品(しょうひん)だなの(あいだ)(はい)っていく。

 (こし)()けている乃花(のか)那成(ななる)たちより数歩分遅(すうほぶんおく)れながらも、足音(あしおと)()てないように(ある)いていった。
 しかし、その通路(つうろ)(さき)()てみると、那成(ななる)がピカピカうさぎにわざわざ(ちか)づく(みち)(えら)んだ理由(りゆう)()かる。
 商品(しょうひん)だなから()したと(おも)われるお(こめ)(ふくろ)が、通路(つうろ)(さき)()()げられていて、(ちい)さな(かべ)のようになっていたのだ。

 乃花(のか)たちはお(こめ)(かべ)(かく)れるようにしゃがみこんで、()どもが1(にん)(とお)れるくらいのすきまから、ピカピカうさぎの動向(どうこう)をうかがった。


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