(うら)スーパーへようこそ ピカピカうさぎに(つか)まったら、人形(にんぎょう)に?

8,(うら)スーパーからの脱出(だっしゅつ)

(やく)2,500()()()わるまで(やく)(ふん)


 永亜(とあ)懐中電灯(かいちゅうでんとう)(さき)(ゆか)につけたのを()て、乃花(のか)懐中電灯(かいちゅうでんとう)()せると、お(こめ)(かべ)()こうにはぼんやりとした()かりがあった。
 乃花(のか)はゴクリとつばを()んで、ふるえる()をにぎりこむ。
(ちか)くに、ピカピカうさぎがいるんだ……!)

 全員(ぜんいん)(いき)(ころ)して()つと、左側(ひだりがわ)からもれるその(ひかり)は、だんだん(あか)るさを()していき……。
 お(こめ)(かべ)()こうに、右側(みぎがわ)()いているピカピカうさぎの(あたま)()えた。


「っ……!」


 乃花(のか)はじわっと、()(なみだ)()かべながら、必死(ひっし)(くちびる)()(むす)ぶ。
 ブルブルとふるえている乃花(のか)()に気づいた那成(ななる)は、そっと()(かさ)ねた。
 乃花(のか)がパッと、となりの那成(ななる)()ると、那成(ななる)(すこ)しほほえんで、乃花(のか)()(つよ)くにぎる。
那成(ななる)さん……大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)……!)

 乃花(のか)はすがるように那成(ななる)()をにぎり(かえ)しながら、物音(ものおと)()てないよう、じっとピカピカうさぎが(とお)()ぎるのを()った。
 那成(ななる)“たち”が以前作(いぜんつく)ったお(こめ)(かべ)によって、乃花(のか)たちに()づくことなく(とお)()ぎたピカピカうさぎは、そのまままっすぐ(ある)いていく。
 永亜(とあ)はお(こめ)(かべ)から(すこ)(かお)()して、ピカピカうさぎのうしろ姿(すがた)をじっと()つめた。


「……()がった」


 2つ(おく)商品(しょうひん)だなの()こうへ姿(すがた)()したピカピカうさぎを()ると、永亜(とあ)はそうささやいて()()がる。
 乃花(のか)も、那成(ななる)がふたたび來璃(らる)をおんぶできるように()(はな)して、ゆっくり()()がった。
 那成(ななる)來璃(らる)(ふく)めた全員(ぜんいん)()()がると、永亜(とあ)はお(こめ)(かべ)(よこ)(とお)()ぎて、一度(いちど)()()った左側(ひだりがわ)()(ぐち)(はし)って()かう。
 そのあとをついていった那成(ななる)來璃(らる)乃花(のか)も、(ひら)かれたままの自動(じどう)ドアの(おく)に、(あか)るい店内(てんない)様子(ようす)(うつ)()されたガラス(とびら)目撃(もくげき)した。

(あか)るいスーパー……! 本当(ほんとう)(かえ)れるんだ……っ!)
 乃花(のか)()(おお)きく(ひら)いて、()(ぐち)――いや、出口(でぐち)()かって(はし)速度(そくど)()げる。
 永亜(とあ)(ひら)かれた自動(じどう)ドアの()こうへ()ると、(のこ)しておいた(おく)(とびら)のすきまに()()しこんで、グッと(みぎ)体重(たいじゅう)をかけた。
 ()いで(あし)()めた那成(ななる)は、來璃(らる)()ろして、永亜(とあ)反対方向(はんたいほうこう)にガラス(とびら)()()ける。

 ハラハラと2人(ふたり)様子(ようす)()(まも)乃花(のか)は、(ひら)いていく(とびら)()こうに、キョロキョロと(あせ)った(かお)であたりを見回(みまわ)している(はは)姿(すがた)()つけた。


「お(かあ)さん……っ!」


 乃花(のか)が一歩前(ぽまえ)()て、(おも)わず(はは)()かって()びかけたとき――。
 乃花(のか)(からだ)は、ふわりと()いた。


「えっ……?」

『かえっちゃ だめ』


 すぐうしろから()こえた(たか)(こえ)に、乃花(のか)()(かた)くする。
 乃花(のか)がいるほうに(かお)()けた3(にん)は、乃花(のか)のわきの(した)()()()んだ、ピカピカうさぎの姿(すがた)目撃(もくげき)した。


土谷(つちや)!」

乃花(のか)ちゃん!」

「お(ねえ)ちゃん……っ!」

「い、いやっ……(たす)けて……っ!」


 乃花(のか)(おお)つぶの(なみだ)()かべて、(ちから)()けた()からカランッと懐中電灯(かいちゅうでんとう)()とす。
 バタ、バタバタ、とゆっくり(うご)かし(はじ)めた(あし)はなんの抵抗(ていこう)にもならない。


『いっしょに あそぼう』

永亜(とあ)くんっ、來璃(らる)をお(ねが)い!」

「あぁ!」

「お(ねえ)ちゃん……!」

「いやっ、やだっ、人形(にんぎょう)になりたくないっ!!」


 永亜(とあ)來璃(らる)()(うで)をつかんで、充分(じゅうぶん)(ひら)いたガラス(とびら)()こうへ()っぱった。
 那成(ななる)はまっすぐピカピカうさぎのもとへ(はし)()ると、(はげ)しく(あし)(うご)かす乃花(のか)(した)で、ドンッとピカピカうさぎに体当(たいあ)たりする。
 ピカピカうさぎの()から(はな)れた乃花(のか)(からだ)は、()()いた那成(ななる)(うで)(なか)へと()ちていった。


「やだっ、やだっ……!」

大丈夫(だいじょうぶ)だよ、乃花(のか)ちゃん……っ!」


那成(ななる)、さん……っ?)
 どうなったのかも()からず、ジタバタと(あば)れていた乃花(のか)は、今乃花(いまのか)()れているのが那成(ななる)だと()づくと、(なみだ)(なが)しながら那成(ななる)にしがみつく。
 那成(ななる)乃花(のか)をお(ひめ)さま()っこしながら、()きそうな(かお)でぬいぐるみを(いだ)きしめている來璃(らる)のもとへ(はし)った。
 永亜(とあ)はガラス(とびら)(よこ)那成(ななる)たちが(はし)()けるのを()ちながら、体勢(たいせい)()(なお)したピカピカうさぎに()かって、懐中電灯(かいちゅうでんとう)()げつける。

 全員(ぜんいん)現実(げんじつ)のスーパーへ()たのを確認(かくにん)して、最後(さいご)(うら)スーパーを()永亜(とあ)は、ガラス(とびら)全身(ぜんしん)()して、ピカピカうさぎを(うら)スーパーに()()めた。


乃花(のか)!?」

「ひぐっ、お(かか)さぁん……っ!」


 とつぜん、どこからともなく(あらわ)れた乃花(のか)姿(すがた)()つけた(はは)は、おどろきの(こえ)をあげながら乃花(のか)たちに()()る。
 乃花(のか)(はは)(かお)()ると、(はは)()()ばして「うわぁぁぁぁん!」(おお)きな()(ごえ)をあげた。


****

 後日(ごじつ)乃花(のか)たちを代表(だいひょう)して、1週間現実世界(しゅうかんげんじつせかい)から姿(すがた)()していた那成(ななる)が、すべての出来事(できごと)警察(けいさつ)(はな)した。
 しかし、(こと)なる世界(せかい)にある(うら)スーパーの存在(そんざい)も、()どもを人形(にんぎょう)()えてしまうピカピカうさぎの存在(そんざい)も、ちゃんと(しん)じてもらうことはできず……。
 (むかし)、スーパーにあった()ぐるみとピカピカうさぎの外見(がいけん)一致(いっち)していることで、()ぐるみの行方(ゆくえ)調(しら)べられたくらいだった。

 また、乃花(のか)たちは、まだ(かえ)ってこない()どもたちについて、()(かえ)警察(けいさつ)から(はなし)()かれることになる。
 (うら)スーパーから現実(げんじつ)(かえ)った4(にん)は、その()(だれ)もスーパーに(ちか)づくことはなくなり……。
 乃花(のか)來璃(らる)は、うさぎのぬいぐるみを()るだけで、おびえを()せるようになった。


(もう、あんなところへは()きたくない……でも、蕗咲(ろさ)ちゃんや、(ほか)()たちは……)
 1人(ひとり)()ることができなくなった乃花(のか)は、(よる)(はは)()きついてベッドに(はい)りながら、人形(にんぎょう)になった()どもたちのことを(かんが)えた。
 電気(でんき)()した部屋(へや)(なか)()()けると、(はは)のうしろに、こちらを()つめるピカピカうさぎの(かお)()えた()がして、乃花(のか)()見開(みひら)く。


「キャァァァッ!」

乃花(のか)っ? どうしたの!?」


 ――いっしょに あそぼう

 乃花(のか)(あたま)(なか)にひびく(こえ)など()こえるはずもない(はは)は、あわてて部屋(へや)電気(でんき)をつけ、「乃花(のか)? 乃花(のか)!?」と(からだ)をゆさぶって()びかけた。


****

 (ちい)さいお(とも)だちが4(にん)(かえ)っちゃった。
 残念(ざんねん)だけど、さみしくないよ。
 だって、おまじないをかけた(ちい)さいお(とも)だちがたぁくさん、ボクと一緒(いっしょ)(あそ)んでくれるからね。
 ずっと、ずっと、一緒(いっしょ)なんだ。

 もしさみしくなったら、またみんなを()ぼう。
 そうしたら、(かえ)っちゃった(ちい)さいお(とも)だちにも、また()えるかな?

 フフフ、フフフ、(たの)しみだなぁ。
 またみんなと(あそ)ぶのが、(たの)しみだなぁ。


[おわり]

(※無断転載禁止(むだんてんさいきんし)