谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice ―
3,恩人 との再会
倉庫わきに
走り出したバイクから落ちないように、必死でシートにつかまって
どこかの路地裏にバイクが止まって、地面に足を下ろすことができたとき、私の腕と太ももは、“無傷”の
バイクなんて、初めて乗った……まだ心臓がドキドキしてる……。
「はっ、小ジカみてぇだな。気合入れろよ、新入り。
茶髪の男子に笑われても、ケガをすることなくバイクを下りられたことのほうがうれしい。
バイクを停めたまま、どこかへ歩き出した茶髪の男子を追いかけて周りを見まわすと、倉庫を出たときより周囲にいる人数が減っていることに気づいた。
そのうえ、3グループに分かれるように、数人ずつ べつの方向へ歩き出している。
いつのまにか、グループごとのべつ行動になったらしい。
「あの……
「あん? 知らねぇで来たのかよ。澄ましたいい子チャンぞろいのムカつくチームさ」
“チーム”……それにさっき、“
攻撃しようとしてるみたいだし、
評判のわるい
その入り口から、ちょうど1人、黒髪の男子が歩いて出てきたのを見て、
「行くぞ、新入り」
「え……?」
私に声をかけて、3人は凶悪な顔で彼の行き先を追うように歩き出した。
もしかして……あの男子をねらってる……?
どうしよう、私、ケンカとかできないのに……。
それに、1人をかこむ“複数人”の一員になんて、なりたくない……。
眉を下げながらも、あの男の子に会うまで
倉庫を離れて
「おい」
「……」
トゲのあるその一声を聞いただけで、私なら“あぁ、また不運が降ってきた”と思うだろう。
足を止めて振り返った黒髪の彼は、切れ長の落ちついた目をまっすぐこちらに向けた。
――その顔を見て、目に焼き付いた姿が彼に
「え……?」
あのときの、男の子……!?
目を見開いて、数歩先にいる彼のととのった顔をまじまじと見つめると、形のいい赤い唇が開かれた。
「またちょっかいをかけに来たのか。俺がおまえらにやられるとでも?」
「うるせぇ! てめぇだけは絶対ぶち殺す!」
「はっ……やれるもんならやってみろ」
冷笑であしらう顔を見つめながら、どうして、と とまどう。
あのときは
もしかしてあの男の子じゃないのかな、と一瞬浮かんだ考えは、彼が腕まくりをして見えた、左腕にある赤い
あの切り傷の痕は……私を助けてくれた、あのときの……!?
「らぁぁ!」
声をあげて、茶髪の男子が彼になぐりかかって いったことに気づくと、ハッと息を飲む。
思わず前に伸ばした手は宙をつかむだけだったけど、黒髪の男の子は せまるこぶしを
「ぐっ……! ぼさっとしてんな新入り! おまえもこいつをぶちのめせ!」
一撃をもらったお
でも、あの男の子に暴力を振るうなんて、私には……。
半歩下がって眉を下げると、他の
「あ……っ」
彼を心配する私の目に映ったのは、彼が涼しい顔で2人の攻撃を避け、逆に2人をまとめて
私が
この調子なら彼がケガをすることはなさそう、と
「え……っ」
押されたいきおいのまま前に出ると、パッとこっちを見た黒髪の男の子と視線がからみ合って、そのまま彼にぶつかりそうになる。
「うっ……」
「ぐぁっ!」
特に強打した左半身を押さえながら、うめき声が聞こえたうしろを振り返ると、
その前に立っているのは、やっぱり黒髪の彼だった。
私を避けて、いつのまにか私のうしろに立っていたあの人をなぐりに行ったらしい。
チッと舌打ちが聞こえた反対側を見ると、残った
「おまえはまだやるか? それとも、あいつみたいに逃げるか?」
トゲのにじんだ冷たい声が耳に入って、視線を黒髪の彼にもどせば、するどく見すえるような視線に射抜かれて、体がこわばった。
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