酸 いも甘いも、イケメンぞろい。
3,美男美女3人衆
それは、キーンコーンカーンコーン、と4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った直後のことだった。
教室の前の扉がガラッと開いて、備品室にいた、きれいな女の人が顔をのぞかせる。
「うーんと……あ、いたいた。
「えっ?」
教室のなかに視線を走らせると、美人さんはにっこりと私に向かって笑いかけた。
クラスメイトの、みんなの視線まで感じる。
「は、はい、分かりました……」
「
「あら、ごきげんよう、先生。かわいい生徒に向かって決めつけはよくありませんわ。授業ならちゃんと受けています」
口元に手を添えて、少し首をかしげるようにほほえむ姿は上品で、セレブなお嬢さまみたい。
ぽーっと
あわてて教室を出ると、早乙女さんはにこりと笑って、「それじゃあ行きましょう」と歩き出す。
近くに来て分かったけど、モデルさんみたいに背が高いんだなぁ……。
スラッとしてて、スタイルまできれい。
「あ、あの、なんのご用でしょうか?」
「ふふっ、望羽ちゃんとナイショのお話がしたいの。少し遠いけど、ついてきてくれる?」
早乙女さんは少し振り向くと、人差し指を口の前に立てて、上品にほほえんだ。
思わず赤面しながら、わたしはこくこくとうなずいて、早乙女さんについていった。
そうして着いた場所は、B棟2階の備品室。
なかに入ると、あのとき早乙女さんと一緒にいたイケメンさん2人がいた。
「それじゃあ、自己紹介ね。私は花もはじらう
「は、はい、未來先輩っ」
ほおの横で両手を合わせてほほえむ未來先輩に、しっかりうなずいてみせる。
すると、未來先輩の向かいで床に座っていた男の人が立ち上がった。
座っているときも体が大きいと思ったけど、立ち上がると
でも、そんな
「俺は
「わ、ありがとうございます、犬丸先輩」
ズボンのポケットから取り出して渡されたのは、スーパーやコンビニでよく売っているクッキー。
……でも、おかしを学校に持ってくるのって、
「犬丸先輩! いいひびきッス~! 聞いたッスか、先輩ッスよ、先輩!」
「よかったですねぇ、イヌ先輩」
「うんうん、未來くんのバカにするような“先輩”とはひびきが違うッス!」
「藤一、座ってろ。せま苦しい」
「はいッス~」
犬丸先輩は、にこにことあぐらをかいて床に座りこんだ。
なんだか、わんちゃんが“おすわり”って言われておすわりしたみたいに見える。
名前にひっぱられすぎかな?
「俺は
最後に名乗った葛谷さんは、手に持ったスマホを下ろしてわたしを見た。
声もしゃべり方も落ち着いていて、冷たそうな外見と相まってクールな印象を受ける。
先輩って呼ぶのも
それでも、ずっと見ていたくなるような、かっこいい顔をしているから、思わずぽーっと……。
って、また見惚れちゃってた!
「あ、わたしは天衣望羽です。
この3人って、お兄ちゃんが今日初めて会った人たちなんだよね?
お兄ちゃんと友だちになりたいとか、そういう話かな……?
おずおずと3人の顔を見回すと、未來先輩がにこりと笑顔を返してくれた。
「えぇ、そうよ」
「その前に。茅都から、俺たちのことをなんて聞いた?」
「え? えっと、今日初めて会ったって……あの、先生になにか頼まれてここに来たんですよね?」
葛谷さん、お兄ちゃんのこと“茅都”って名前で呼ぶんだ……。
一緒に用事を済ませて仲良くなったのかな? でも、それにしてはお兄ちゃんが……。
変だなぁ、と思いながら3人の顔を見回せば、眉を下げてしゅんとした顔をする犬丸先輩と目が合った。
「天衣くん、ひどいッス」
「ふふっ、茅都先輩らしいわ。私たちと関わらせたくなかったんでしょうね?」
「ふ……隠しごとが得意なやつだからな」
目を伏せて口元を緩めた葛谷さんを見て、思わずドキッとする。
笑うとさらにかっこいい……。
冷たそうな雰囲気が散って、なんだか妖しげな雰囲気がただよってるし。
葛谷さんの視線がわたしに向くと、
「茅都は俺たちの“親友”だ。そして、共犯者でもある」
「え……?」
ふ、とわたしを見ながらほほえんだ葛谷さんは、スマホを犬丸先輩に差し出す。
犬丸先輩は長い腕を伸ばしてスマホを受け取ると、ひざ立ちになってうしろのスチールラックに向き直った。
お兄ちゃんが、葛谷さんたちと仲のいい友だちで、共犯者……?
って、どういうこと……?
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