()いも甘いも、イケメンぞろい。

番外編1、きれいな先輩の困りごと②

約2,200字(読了まで約6分)


 奥の段ボール箱に腰かけている雨蓮(うれん)さんは、顔を上げて春宮(はるみや)先輩を見た。


「これが始まった時期と、送られてくる手口は?」

「えっと、先週の月曜日からです。朝、学校について下駄箱(げたばこ)を開けたら、写真が何枚か、うわばきの上に置かれていて」

「いつも何分ぐらいに来るッスか? 帰る時間も教えて欲しいッス!」

「朝は、予鈴の10分前くらいに着くようにしてます。帰りも、部活とかには入ってないので、ホームルームが終わったらすぐ帰るほうです」

「それじゃあ、朝でも放課後でも仕込む時間は充分にありますね。どうします、クズ先輩?」


 ひら、と写真を振って、未來(みらい)先輩は雨蓮さんを見る。
 雨蓮さんは持っていた写真を犬丸(いぬまる)先輩に渡して、「本人を直接たたいてもいいが……」と言ったあと、わたしを見た。
 なんだろう……?
 目が合うだけでドキッとしちゃう。


「平和にいくか。盗撮(とうさつ)の現場を押さえる」

「はいッス!」

「ですね。……春宮さんはしばらく、ふつうに過ごしててくれるかな? 僕たちが盗撮犯を見つけて、証拠(しょうこ)を確保するから」

「う、うん……分かった」

「せっかくなら、しばらく泳がせるか。1枚きりじゃ弱いからな」


 雨蓮さんは、ふ、と妖しくほほえんだ。
 な、なんだか悪い顔をしている気がするんだけど……。


「悪いことを考えてるよね、雨蓮? 望羽(みはね)に悪影響だからやめてくれる?」

「大したことじゃない。少し楽しもうと思っただけだ」


 目を伏せて笑った雨蓮さんを見て、ドキドキしつつ、なんだか心配になるなぁ、と苦笑いする。
 もう悪いことはしないと思うけど。
 お兄ちゃんたちがよく言う“性格の悪さ”が出てるのかな?
 なんてことを考えていると、ふと、春宮先輩がぽーっと雨蓮さんを見ていることに気づいて、あれ、と思う。


「証拠がそろったら未來を通して連絡する。それまでは、盗撮のことは気にせず自由にしていろ」

「は、はい……」


 ハッとした顔でうなずく春宮先輩を見て、ちょっと様子が変だったのは、たんにぼーっとしてただけかな?と納得した。
 春宮先輩が視線を落として、不安そうにしているから、わたしは、うん、と決意して口を開く。


「春宮先輩! 先輩たちが証拠を集めている間、わたしが一緒にいますね」

「え……?」

「望羽」


 お兄ちゃんが眉を下げて心配そうにわたしを見るから、安心させるために笑い返した。


「どこかで盗撮されてるって思いながら過ごすのって、きっと怖いから。……事情を知ってる人と2人でいれば、不安も半減しますよ」

「……ありがとう」


 春宮先輩は、ホッとしたような笑顔を見せてくれる。
 美人さんらしく、きれいな笑顔で少し見惚(みほ)れちゃった。


「いいえ。あ、自己紹介がまだでしたよね。わたし、天衣望羽(あまいみはね)です」

「私は春宮(はるみや)澄花(すみか)よ。声をかけてくれてありがとう、望羽ちゃん」


 えへへ、と春宮先輩に笑ってから、お兄ちゃんと先輩たちを見た。


「それじゃあ、わたしは春宮先輩と一緒に行きますね。盗撮のことはよろしくお願いします!」

「うん、望羽ちゃん、またね」

「任せて欲しいッス!」

「あぁ」

「なにかあったらすぐ連絡するんだよ」


 お兄ちゃんにはうなずいて答えて、手を振りながら春宮先輩と備品室を出る。
 A棟に戻るとちゅう、春宮先輩はしみじみと言った。


「本当にものすごいイケメンぞろいだったわね……望羽ちゃん、あの人たちと一緒にいたらドキドキしない?」

「あはは、します……」


 ただでさえかっこいい人たちなのに、わたし、みんなに告白されてるから……。
 むしろ、ドキドキしないときがないかも。


「望羽ちゃんも大変そうね……女子に嫌がらせとか、されてない? 早乙女(さおとめ)くんだって、今はけっこう人気だし」

「嫌がらせですか? うーん、そういうのはないですね」

「へぇ、そうなの……それはよかったわね」


 意外そうにあいづちを打ちつつ、ほほえんで言われて、「はい」と笑った。
 そういえば、お兄ちゃんを独占(どくせん)しちゃってにらまれることもなくなったなぁ……。
 どうしてだろう?

 ふしぎに思いつつも、悪いことではないから、まぁいっか!と切り替えて、わたしは春宮先輩に話しかけた。


****

 休み時間は春宮先輩に会いに、3階へ通うようになってから数日。
 すっかり春宮先輩とも仲良くなって、早く先輩を迎えに行こう、と思いながらお弁当を取り出していると、スマホがふるえた。
 ポケットに手を入れて通知を確認すると、犬丸先輩からのメッセージで。


[準備が整ったから盗撮犯に会いに行くッス。3階の空き教室へ来て欲しいッスよ]


「あ……」


 そっか、証拠が集まったんだ!
 わたしは[分かりました]と返信して、お弁当を机の上に置いたまま、急いで3階に向かった。


「春宮先輩、みなさん!」

「あ、望羽ちゃん……」


 空き教室の場所は春宮先輩から聞いてたから、まっすぐ歩いてくると、空き教室から少し離れたところにみんなが集まっていた。
 未来先輩や犬丸先輩に笑顔で手を振られて、にこっと手を振り返し、春宮先輩に近づく。


「盗撮犯がなかに入っていったのは確認した。まずは1人でやつに会って、要求を聞き出せ」

「は、はい……」

「大丈夫です、危ないことになる前に、絶対先輩たちが助けてくれますよ! わたしもすぐ近くにいます」


 不安そうな春宮先輩を元気づけると、「うん」とほほえみを見せてくれた。
 春宮先輩を怖がらせる悪い人……一体、どんな人なんだろう?


ありがとうございます💕

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