()いも甘いも、イケメンぞろい。

番外編1、きれいな先輩の困りごと①

約2,200字(読了まで約6分)


 いいなんでも屋さんは、先輩たちがイケメンぞろいということで、主に女の人からの依頼が多くて、なかなかいそがしくしているみたい。
 とはいえ、その内容はすぐに解決できるかんたんなものが多いみたいだけど。
 わたしは同じ1年生から依頼を聞いて、先輩たちに伝えるのが主な仕事で、それ以上のお手伝いをすることはあんまりない。
 本当はもっと手伝いたい気持ちがあるんだけど、お兄ちゃんに「それはあいつらの仕事だ」って言われちゃって。

 休み時間、移動教室から帰ってきて、教室へ向かうとちゅう、屋上前へ上がっていくきれいな女の人を見かけた。
 屋上前に行く人がめずらしい、というのもあるけど、その人がなんだか暗い顔をしていたのが気になって、わたしはいったん教室に戻るのをやめる。


「こんにちは。あの、どうかしたんですか?」

「え……」


 教科書やノートを持ったまま、階段を上がっておどり場から上を見ると、女の人はビクッとおびえた様子を見せた。


「あ、おどろかせてごめんなさい。暗い顔をして上がっていくのが見えて、気になっちゃって……なにかあったんですか?」

「……ううん、なんでもないの。ごめんなさい、別の場所に行くわ」


 眉を下げて笑い、階段を下りてくる女の人を見て、わたしは階段を登りながら「あのっ」と声をかける。


「もしかして、なにか困ってることがあるんじゃないですか? わたし、なんでも屋さんのお手伝いをしていて。よかったらお話、聞かせてください」

「なんでも屋……? って、早乙女(さおとめ)くんとか、ものすごいイケメンがやってるってうわさの?」

「はい、そうです! 2年生の人ですか?」


 未来(みらい)先輩の名前だけ知ってるってことは、そうかな?って思って聞いてみると、「うん」と女の人はうなずいた。
 足を止めてくれた先輩に近づいて、階段に座ると、先輩も一緒になって座ってくれる。


「そっか……女子に人気だって聞いてたけど、1年生の女の子も手伝ってるんだ」

「あはは、ちょっと事情があって。それで、どんなことに困ってるんですか?」


 きれいな横顔を見て聞けば、先輩はやっぱり暗い顔をして、少しの間だまりこんだ。


「……私ね、今、誰かにおどされてて」

「おどされて?」


 ぶっそうな話にびっくりして目を丸くすると、先輩は「うん」と目を閉じる。


「もう1週間くらい前かな……下駄箱(げたばこ)に、盗撮(とうさつ)写真が入れられるの。毎日、枚数が増えていって……昨日は、手紙が一緒に入ってた」

「……どんな手紙だったんですか?」

「“盗撮をやめて欲しかったら、昼休みに3階の空き教室に来い”って。行こうか悩んだんだけど……怖くて行けなかった」

「そうですよね……」


 下駄箱に毎日盗撮写真が入れられるなんて……誰だって怖いよ。
 先輩は、美人さんだからねらわれちゃったのかな……?


「そしたら今日の朝は……“来るまで待ってる”って手紙と一緒に、また盗撮写真が入ってた。たぶん、昨日撮られたやつ」

「そうなんですか……怖かったですよね」

「うん。誰も来ないところで休もうと思って、ここに来たの」

「そうでしたか……先輩、なんでも屋さんに助けを求めましょう! わたし、みなさんに連絡して集まってもらうので、今から来てもらえますか?」

「え? ど、どこに?」

「B棟です!」


 にっこり笑って、わたしはいつでも先輩たちに連絡できるよう、持ち歩くようになったスマホをポケットから取り出した。
 雨蓮(うれん)さんは、あれからも“実験”継続になって、連絡先を交換してないんだけど。
 他の先輩たちとは交換したから、みんなで備品室に集まって欲しい、って連絡して、教科書やノートを教室に置いてから、先輩とB棟に向かう。

 お兄ちゃんも含めて、みんなすぐに集まってくれたみたいで、備品室についたのはわたしたちが最後だった。


「あれ、きみは……春宮(はるみや)さん、だっけ」

「あ、うん」


 未来先輩は先輩のことを知ってたみたいで、にこっと愛想よく笑う。
 春宮先輩のほうは、備品室に集まっている先輩たちの顔を見て、少しびっくりしてるみたいだった。
 まぁ、本当にみんな、お兄ちゃんを含めてすごいイケメンだから……。


「みなさん、集まってくれてありがとうございます。こちらの先輩が盗撮写真でおどされて困っているので、助けてあげてください!」

「盗撮写真ッスか?」

「はい、あの……これ、なんですけど」


 春宮先輩は、B棟に来るとちゅう、相談用に取りに戻ってくれた写真をファイルから取り出して、みんなに見せる。
 写真に写っているのは、教室で机に座っていたり、廊下(ろうか)を歩いていたり、階段を登っていたりする春宮先輩の姿。
 特に目立った内容ではないのだけど、それがたくさんあるところが、他人のわたしでもぞっとする。

 先輩たちは写真を受け取って、それぞれ何枚か、ながめた。


「困ったことをする人がいるんだね……」

「……なるほどな」

「おどされてるっていうのは?」


 未来先輩が聞くと、春宮先輩はファイルの中からメモを取り出して見せる。


「昨日、この手紙が一緒に下駄箱に入ってて……怖くて行けなかったら、今日はこの手紙が」

「“昼休みに3階の空き教室へ来い”、か。手書きだから特定はかんたんそうですね」


 あっさりと言う様子が、なんだか頼もしい。
 春宮先輩を助けてあげて欲しい、とわたしは先輩たちとお兄ちゃんの思案(しあん)顔を見回した。


ありがとうございます💕

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