酸 いも甘いも、イケメンぞろい。
16,お兄ちゃんのうたがい
ハッと気を持ち直して振り返ると、険しい顔をしたお兄ちゃんが近づいてきて、わたしから先輩たちを引きはがした。
守るように抱きしめられると、ホッと一息つくよゆうができる。
「お兄ちゃん……」
「チッ、もう来たのか。足止めしておいたのに……」
「
先輩たちをにらみながら、低く言ったお兄ちゃんの言葉で、もしかしてあの子が、と4階についたときに話した女の子の顔が浮かんだ。
先輩たちも同じことを思ったのか、
「言ったよな、二度と望羽に近づくなって。望羽を泣かせたことは一生許さないぞ。さっさと消えろ、クズども」
「お、お兄ちゃん、ちょっと待って! そのことは謝ってもらって、仲直りしたから……!」
「はぁ……? 望羽、だまされてるんだ。望羽はいい子だから分からないかもしれないけど、世の中にはこいつらみたいな悪人もいるんだよ」
「た、確かに悪いことはしたけど、でも、本当の悪い人じゃないよ……! お兄ちゃんだって、先輩たちとは気が合う友だちなんでしょっ?」
必死にうったえると、お兄ちゃんは目をつぶって、眉根を寄せながら顔を
「こんなやつらと関係を持った俺がバカだった。望羽を傷つけるようなゴミカスどもと関わってたから、望羽を泣かせることになって……」
「そんなことっ、言っちゃダメ!! わたしは先輩たちのことっ、好きだもん!」
お兄ちゃんがひどい暴言を吐くものだから、思いっきりさけんで、眉を下げながらお兄ちゃんを見つめると、お兄ちゃんがハッと、
わたしを想ってくれるのはうれしいけど、先輩たちにひどいことは言って欲しくないよ。
胸がギューッと
「あ、今のは違いますからね!? そういう好きじゃなくてっ、人として好きっていうことで……っ! だから今のはお返事とかじゃなくて!」
赤面しながら弁解すると、みんな目を丸くしてわたしを見る。
「……望羽、かわいくないか?」
「かわいいです」
「かわいいッスね」
「望羽がかわいいのは事実だけどお前らがかわいいとか言うな! 望羽が
「お、お兄ちゃんまでなに言ってるの!?」
そんな状況じゃないのに!
わたしはパタパタと両手を振って場の空気を切り替えてから、まずお兄ちゃんを見つめた。
「お兄ちゃん、先輩たちはちゃんと謝ってくれたの! わたしは怒ってもないし、先輩たちを嫌ってもいないから、仲直りしたんだよ」
「でも、望羽……!」
「もう嫌なことだってしないはずだもん! ですよね、みなさん!?」
振り返って聞くと、
「あぁ」
「もちろん!」
「そッス!」
「お前らの言葉なんか信用できるか! そもそもの性格が悪いんだ、またくり返すに決まってる!」
「性格が悪いのはおたがいさまだろ。他のやつはともかく、望羽は大切にする」
「お前と一緒にするな、
お兄ちゃんは変わらず、先輩たちをにらんだまま。
どうしたらみんなが悪い人じゃないって、分かってもらえるんだろう……?
視線を落として考えていると、葛谷さんがため息をついた。
「他人に無関心なお前だって、望羽にはベタ
「……望羽ちゃんを傷つけて泣かせたこと、心の底から後悔しました。だから僕は、もう二度と望羽ちゃんを傷つけたりはしません」
「そッス、もう人を傷つける“イタズラ”なんてしないッスよ。望羽ちゃんには笑ってて欲しいッス。笑顔が一番似合う子ッスから」
にこっと笑った犬丸先輩と、真剣な顔をしている未來先輩、いつも通りのクールな表情をしている葛谷さんを見て、心を打たれる。
みんな……。
「……まさか、望羽に本気になったって言うのか?」
「あぁ」
「はい、
「はいッス」
しっかり返事をする先輩たちに照れながらも、わたしはお兄ちゃんに顔を向けて笑った。
「ね、お兄ちゃん。先輩たち、悪い人じゃないんだよ。今は告白されて、ちょっと困ってるんだけど……」
「はぁっ!? 告白!?」
お兄ちゃんは目を見開いてわたしを見つめたあと、ものすごい勢いで先輩たちをにらむ。
あ、あれ……?
「あぁ、した。悪いか?」
「しました。愛をこめて」
「しちゃったッス」
クールに流す葛谷さん、きれいに笑う未來先輩、にこにこ笑う犬丸先輩、みんなを見て、お兄ちゃんはおでこを押さえた。
「3人とも、だと……っ。ふざけるなっ、お前らみたいな性格の悪いやつなんかに望羽は渡さない!」
「怒っちゃダメッスよ、
「僕は茅都先輩にも認めてもらいます」
「お前の許可なんて必要ない、望羽はさらっていく」
「み、未來先輩っ、葛谷さん……!」
なんてことを言うの、2人とも!?
かぁっと赤面すると、犬丸先輩が「俺はどうしようッスかね~」と考える素振りを見せた。
犬丸先輩までなにか言うつもり!?
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