不良ぎらいだけど面食いな私VS超イケメンな不良
4,幸せすぎる登校時間
どんなに信じられない状況であっても、現実は現実。
なんてことないように新しい1日がおとずれて、おとずれて……とうとう金曜日になってしまった。
約1週間高校生活を送ってきた私は、今日も深呼吸をして玄関の扉を開ける。
すると「行ってきまーす!」ととなりから元気な声が聞こえてきた。
「あ、
「お、おはようございますっ、
「真陽先輩、おはようございます」
「うぐっ、おはようございます、
愛らしい丸いおめめをした、ランドセルを背負っている鈴ちゃんと、ブレザーをきっちり着ているパチッとした瞳のイケメン、爽くんにあいさつを返す。
2人ともかわいい系のお顔立ちをしていて、長男のイケメンさまとはまた違った
すでに興奮ゲージは80%までたまっているのだけど、この2人がいるということはもちろんラスボスがひかえていて……。
「おはよう、
「おっ……おはようございます
クールに名前つきであいさつをしてくれた大我先輩を、真正面から視界に収めてしまって、私は赤面しながら心のさけびを口にした。
今だけは大我先輩が不良だということを忘れておがみたい。
毎朝の幸福に感謝の言葉をならべて美形3兄弟をたてまつりたい。
「あははっ、真陽先輩って本当に兄さんの顔好きですね」
「大我お兄ちゃんはかっこいいから当然だよ! 鈴が“せんぞくすたいりすと”してるもん!」
「……お前たち、話しこんでると学校に遅れるぞ。寺岡も固まってないで動け」
「はいっ!」
“お兄ちゃん”をしてる大我先輩も眼福すぎる……っ!
感きわまって泣きたい気持ちにさえなりながら、私は美形3兄弟のうしろについていって、マンションを出た。
とちゅうまで一緒に歩いて、鈴ちゃん爽くんと別れると、大我先輩はクールな視線を私に向けてくる。
「寺岡、俺とタイマンしろ」
「
「……俺の顔に、免じて」
ぎこちなくお顔を引き合いに出してくる大我先輩の不器用さがかわいくて、今日もキュンとしつつ、ガバッと頭を下げた。
「すみませんがおことわりします! あと“俺の顔見せてやらないぞ”とか、“タイマンを受けたら好き放題俺の顔を鑑賞させてやる”くらい言ってくださいっ!」
「……ふつうの顔だろ」
「とんでもありませんっ、顔面国宝さまですよ!? 国が保護してしかるべきご
「やめろ……」
顔を上げると、大我先輩は眉根を寄せて、目をつぶりながら顔を背け、首の裏に触れている。
照れているお姿も最高なんですが!?
「大我先輩、不良やめませんか! 暴力なんてよくないですよ!」
「……やめない。寺岡こそ、俺とタイマンを張れ」
「すみません! おことわりします!」
毎朝、そんな会話をしながら一緒に登校するのがお決まりの流れ。
私も大我先輩も一向に引かないせいで会話はどうどうめぐりなんだけど、学校に着くとそれぞれの教室に向かうため、話を切り上げて別れることになる。
「休み時間も教室に行く」
「ありがとうございます!! でも野良試合だけは本当にむりなので、すみません……!」
イケメンさまが休み時間も会いに来てくれるとか至福がすぎる。
感謝の気持ちが先に出てくるけど、そのあとでしっかり大我先輩の目的を先回りしておことわりすると、先輩はため息をついて去っていった。
こんなやりとりをしすぎて、いつの間にか“あの女はイケメン狂い”とうわさされているようだけど、私にはそんなことよりも複雑に思うことがあって。
大我先輩との登校風景を思い返してよいんにひたりながら教室に向かうと、
「っす……」
「ども……」
「おはようございます」
おそいかかってくる男たちをひたすら返り
分かりやすく言うと、今、私が1年のトップ……ということになっているらしい。
私は不良になんてなったつもりはないのに……!
「おい、どこ見てんだよ。やるか? あ?」
「あ? ぶつかってきたのはお前だろうが」
廊下の先で男2人がケンカしそうな
「そこ! ケンカはやめなさい! なぐり合いなんてもってのほかですよ! ぶつかってしまったならおたがいにあやまりましょう!」
「……悪かった」
「いや、こっちこそわりぃ……」
「そうです、おたがい悪意なんてないんですから。あやまれてえらいですよ」
にっこりと笑ってほめると、男たちは少しほおを赤くして顔を背ける。
……と、まぁ、こんなふうに、言うことを聞いてくれるようになったのも事実で。
これが“強者にしたがう”という不良の流儀にそってしまっていることだけが、本当に複雑。
力で言うことを聞かせるなんて、不良と変わりがなくなってしまうから。
私はため息をこらえて「おはようございます」と教室に入った。
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