不良ぎらいだけど面食いな私VS超イケメンな不良

3,イケメンさまの要求

約2,100字(読了まで約6分)


 こんな学校で、正当防衛でも暴力ざた~、なんて気にしたところで意味がない。
 そうさとって、入学式が終わったあと、あのとんでもルールを聞いてふたたびやる気を出した男たちを返り()ちにしているあいだに……。
 私はどうやら、自分のクラス……1年3組のトップになってしまったらしい。


「はぁ~、どうしてこうなってしまったんでしょう……人を助けた結果が地獄行きなんてあんまりです……」

「女に負けるなんてありえねぇ! もっかいやれば……ぐはッ!」

「なに片手間にやられてんだよ! 女がトップなんて認めねぇ! オラ、ぁがッ!」


 ホームルームが終わったとたん、またしつこくおそってくる男たちを返り討ちにしながら、ため息をつく。
 本当に、どうしてこんなことに……。
 いや、めげちゃいけない。
 不良ばかりの高校に入ってしまったなら、武道を心得る者として、1人でも不良を減らすべく生徒を矯正(きょうせい)していくべきなのでは!?

 顔を上げて、それしかないと決意した私は、席を立って教室にいる男たちを見た。


「みなさん、いいですか! 力は、むやみやたらに使うものではありません。試合の場だったり、人助けをするときにこそ使うものです!」

「はぁ? なに言ってんだ」

「力は正しく使うべし! 人より強い力を持ったみなさんは、この言葉を胸に刻んでください! 私たちは、わがままを通すために力を持っているのではありません!」


 横からおそってきた男を返り討ちにしながら言うと、クラスメイトの不良たちは、ぐ、と押しだまる。
 そのとき、廊下のほうから「俺には目的がある」と(りん)とした声が聞こえた。
 振り向くと、顔面国宝がいきなり視界に飛びこんできて、くらっと失神しそうになる。


「い、イケメンさま……!」

「……イケメンさま?」


 教室の前に立っているイケメンさまは、理解できない外国語を聞いたときのように、きょとんとした様子で私を見た。


「はっ、い、いえ、正しくは顔面国宝さまだとは分かっていますっ、でも、私もやむにやまれぬ事情でイケメンさまとは相容(あいい)れない立場にあり……っ!」


 イケメンさま、とスケールダウンした呼び方で妥協(だきょう)しているんです!と目をつぶって言い切ると、あたりが、しん……とする。


「……よく、分からないが。俺は2年3組の、仁木(にき)大我(たいが)だ。お前にタイマンをもうしこむ」

「え……すみませんが、おことわりします」


 いくらイケメンさま……大我さまのお言葉でも、不良との野良試合はちょっと。
 大我さまは眉根を寄せて不満をあらわにしたものの、不機嫌(ふきげん)なお顔もかっこいい……じゃなかった、暴力行為には付き合えない。


「……1年のなかで、一番強そうなのがお前だった。俺は最強になるために、お前に勝つ必要がある」

「そうですか……でも、おことわりします。私は“暴力”を振るう気はないので」

「……ことわるなら」


 ぼそっとつぶやいた大我さまはするどい視線を私に向けて、一瞬で距離を詰めてきた。
 せまってくるこぶしを、ぎょっとして()けたあと、私は大我さまから距離を置く。


「あ、あの、私、野良試合はおことわりしたと思うのですが!」

「お前が拒否しても、俺はお前とやる必要がある。ことわるならその気にさせるだけだ」

「えぇぇっ!? そ、それは困ります!」


 冗談(じょうだん)でもなんでもなく、大我さまは私から視線を外さずに追撃をしかけてきて、私はあわてて机からスクールカバンを回収した。
 大我さまを抑えこむのは苦労しそうだし、ここはいったん逃げてしまおう!
 また冷静になったときに説得すればいいし!


「わ、私、今日は急ぎの用事があるので! 失礼します!」

「待て――!」


 私は教室から走り去って、高校に通うために1人で引っ越してきたマンションへと逃げ帰った。
 ちょっと道に迷って時間がかかったけど、確かに私の新居へ帰ってきた――はずが。


「た、大我さま……? どうしてここに……」

「……俺はただ、自分の家に帰ってきただけだ。お前こそ、どうしてうちの前にいる?」


 マンションの廊下(ろうか)でばったり大我さまとはち合わせて、私は思いっきり目を見開いた。
 “自分の家に帰ってきた”って……?


「え……だって、ここ、私の家なので……」


 私は503号室と書かれた自分の家を指さす。
 大我さまは私の指の先に目を向けて「寺岡(てらおか)、ま……?」と用意したての表札を読んだ。


真陽(まひる)、です」

「……そうか。それなら、寺岡がうちのとなりに引っ越してきた、ってことだな」

「“うちのとなり”……!?」


 直後のワードが強烈すぎて、大我さまに名前を呼んでもらえたよろこびも吹き飛ぶ。
 大我さまが指さしたとなりの家の表札を見ると、確かに[仁木]と書かれていた。
 国宝級のどイケメンさまがおとなりさんって、どんな神展開!?


「……ふ、ふつつか者ですがっ、よろしくお願いします! 決して! 決して大我さまをストーカーしたりはしませんので!」

「……言ってる意味が分からないが、さまづけはしなくていい」

「えっ、ではどう呼べと!?」

「ふつうに……先輩とか」


 大我先輩!? そんな! そんな親密な呼び方!!
 キャパを超えた私は、なんとか「し、失礼しますっ!」とあいさつをしてから家に逃げこんだ。
 私の高校生活、本当にどうなっちゃうの……!?


ありがとうございます💕

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