不良ぎらいだけど面食いな私VS超イケメンな不良
2,乱闘を止めたのは?
私はせまってくるこぶしをいなして、攻撃の
別の方向から伸びてくる足はひざを上げてガードして、「暴力はよくないですよ」と言葉を返す。
「――お前……」
うしろからつぶやき声が聞こえたあと、私の肩越しにイケメンさまが男たちをなぐろうとして、ぎょっとしながらイケメンさまのこぶしを抑えこんだ。
周りの男たちとはくらべものにならないくらい重いこぶしで、体勢が悪いのも相まって押し負けそうになる。
「やめてくださいっ、力は正しく使うものです!」
「
「えっ?」
ふっとイケメンさまのこぶしから力が抜けたのもあって振り向くと、イケメンさまは背後にせまった男を蹴りで返り
それから、
周りを取りかこむ男たちと、うしろのイケメンさまから同時に攻撃をしかけられて、誰もけがをさせずに対処するのはむり――!と冷や汗をかいたとき。
「――はい、そこまで」
パンッと手をたたく音がひびいて、イケメンさまのこぶしが止まったすきに、男たちの攻撃をかわして、受け止めて、やりすごした。
私と同様に、男たちも声の主が気になったんだろう。
彼らが攻撃する手を止めたのを見て顔を向けた先には、体育館のすみに1人立っている赤髪の男がいた。
「血の気が多いのはいいけど、入学初日に2年が1年を狩りつくすのはかわいそうでしょ?」
「……
イケメンさまがぼそっとつぶやいたのが、彼の名前なんだろうか?
遠目からでもイケメンな気配を感じる赤髪の彼は、穏やかな声で続ける。
「高校生活、長いんだからさ。そう急ぐことはないって。もうすぐ入学式も始まるし、いったんお開きね」
「あぁ? 知らねーやつに命令されるいわれはねぇよ」
「……かみつく相手はえらびな? 1年生」
変わらず穏やかなのに、背筋がゾクッとするひびきを持った声とともに、赤髪の男から刺すような空気が放たれて、思わずみがまえてしまった。
周りの男たちはそれだけで力の差を思い知ったのか、全員がだまりこんでしまう。
あの男……いったい何者……?
「あ、そうだ。すぐ分かると思うけど、うちの先生にもさからわないことをオススメするよ。みんな滝高のOBだし、退学になりたくはないでしょ?」
ピリついた空気をみずからこわすように、赤髪の男は軽く言った。
私の近くでため息をついたイケメンさまは、大人しく体育館の入り口のほうへ歩いていく。
「滝高へようこそ、新入生たち。もうすぐ先生たちが来るから、なぐり合いはほどほどにね」
そう言い残し、赤髪の男もイケメンさまに続いて体育館を出ていったものの、こちらは乱闘再開、という空気にはならなくて。
にらみ合うくらいでおたがいに距離をとる周りの男たちを見てホッとしながら、私はあの2人のことを考えた。
たぶん、イケメンさまも赤髪の男も上級生なんだよね……?
かなり腕が立ちそうだったけど……不良なのが残念きわまりないな。
そんなふうに考えているうちに先生方が到着して、
校長先生のあいさつや、先生方の自己紹介を経て、入学式が進行していくと、司会の先生のアナウンスがひびく。
「それでは、生徒代表からのあいさつを。3年1組、
どんな人が出てくるんだろう、と思っていると、うしろから強烈な気配を感じて、思わず振り返った。
体育館の入り口から歩いてきたのは、大きく分厚い体に、学ランをきちんと着こんだ男。
「お前たち新入生に、この学校のルールを教えてやる。1年1組から、3年4組まで、3年1組をのぞいた各クラストップの校章をうばったら」
ごくりとつばを飲みながら舞台上の男を見つめると、彼は私たちを見渡すように視線を動かして、右手の親指を自分に向けた。
「お前たちは、この俺、吉田強二に挑める。滝高最強を名乗りたいなら、がんばることだ」
いや……どんなルール……?
校章をうばうって、先生方はこんなあいさつを聞いてなにも言わないの?と、壁ぎわにならんでいる先生方を見れば、素知らぬ顔をしている。
どうやらここ、滝戸高校は、不良の
空手での
いくらねむくなる行為とは言え、やっぱり勉強ってしておくものなんだ……!
自分の成績の悪さがうらめしい!
大きらいな不良にかこまれた高校生活が決定したことに、私は心のなかで涙しながら、進行していく入学式を最後まで聞き流した。
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