不良ぎらいだけど面食いな私VS超イケメンな不良
12,滝高のトップ
「……悩みっていうのは、これのことだったのか?」
「はっ……はい、すっかり、
大暴れする心臓を抱えながらうなずいて答えると、大我先輩は「俺は
ドキドキしすぎるから、そのお顔で
私は“彼氏”になってくれた大我先輩を見つめて、興奮のあまり目をうるませた。
片手で口を押さえながら、校章をにぎった手を差し出して、もう一度大我先輩に言う。
「これ、どうぞ。私、大我先輩に勝てる気がしませんので……!」
「……」
大我先輩は私の背中を支えたまま、手のひらの上にある校章に視線を落として、人差し指と親指でつまみとった。
「……今は受け取るが。俺が滝高のトップになれなかったら、真陽が代わりに挑んでくれないか」
「えっ? わ、私がですか?」
「先週、一緒に
「大我先輩……」
そんなふうに思ってくれたなんて……。
かよわい女子になりたいって思ってたのに、先輩に頼りにされてる今のほうがうれしいのはなんでだろう。
「それに、トップになれば滝高を変えられる。それだけの権力が、あの座にはあるんだ。真陽の考えを広めれば、誰かを守る必要もなくなるかもしれない」
「私の、考えを……」
「力で言うことを聞かせるのはいやかもしれないが……その選択肢も、考えておいてくれないか?」
「はい」
大我先輩のお願いなら、ぜんぶ聞く。
即座にうなずくと、大我先輩はきょとんとまばたきをしてから、ふっとため息混じりに笑った。
笑顔が強すぎる!!
「た……大我先輩にも、お願いします。大我先輩が滝高のトップになったら、私と一緒に、力は正しく使うものだとみんなに伝えてくださいっ」
「……あぁ。そのための“暴力”は……少しのあいだ、
「はいっ!」
お父さん、すみません。恋の前に人は無力なのです!
私は勢いよく答えて、大我先輩と一緒に立ちあがった。
****
5時間目が終わり、休み時間に入ると、私は大我先輩に会いに、3階へ上がった。
大我先輩は残りの校章を集めると言って、1日中野良試合をしていて。
残りは
「
「ん? 2年のトップと1年のトップがおそろいで、どうしたの?」
「あんたにタイマンをもうしこむ。……残りは、あんたと
「え……」
「遠藤先輩のそれ、大我先輩に渡していただきます」
私も遠藤先輩に顔を向けて
「きみたち、手を組むことにしたんだ?」
「恋は盲目ですから! とは言え、私は大我先輩が
「ははっ、おもしろいね。でも俺たち、これから大事な用があるんだ。全校生徒分の校章を集めたその行動力に免じて、
遠藤先輩はあっさりえりにつけた校章を外して、大我先輩に投げ渡す。
それを見事片手でキャッチした大我先輩は、眉根を寄せた。
「優衣のはいいでしょ? ケンカとは縁がないかよわい女の子だし、回収したって“最強”の
「……あぁ」
大我先輩は、目を丸くしている優衣先輩をちらりと見て答えると、遠藤先輩に視線を戻して口を開く。
「だが、俺が欲しいのは校章じゃなくて、あんたに勝ったっていう――」
「あのね、一番強いやつに勝てば最強って証明できるんだよ。覚えておきな、不器用くん?」
「……遠藤先輩は、
気になって尋ねると、遠藤先輩はほほえんで答えた。
「うん、負けたよ。病院送りになった。だからいいでしょ? 別に俺とは戦わなくて」
「知暖先輩……」
遠藤先輩が病院送りにされるなんて……吉田強二って、どれだけ強いんだろう。
まぁ、彼が言うことももっともだし、と私は大我先輩に顔を向ける。
「大我先輩、とりあえず吉田強二さんに挑みましょう」
「……分かった」
「もういいね?」
遠藤先輩たちは、話が終わると2人で階段を下りていった。
私は吉田強二に挑む条件を整えた大我先輩を見て、声をかける。
「大我先輩」
「……放課後は、あまり時間がない。今から挑みに行く」
「そうですか……私も、ついていっていいですか? その試合、見守りたくて」
「あぁ」
大我先輩はうなずくと、私の手を引いておどり場に上がっていった。
手をつながれたことにドキッとしていた私は、大我先輩に「真陽」と呼ばれて、赤面した顔を上げ……。
後頭部に手を回されて、大我先輩から唇を重ねられ、はれつしたかと思うくらい、バクッと心臓が跳ね上がる。
「~~~っ!?!?」
「かならず勝つ。見ててくれ」
大我先輩は動けなくなった私の手を引いて、4階に上がる。
それから、3年1組の前に立って、滝高トップの男に声をかけた。
「吉田強二。あんたに、タイマンを挑む――」
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