不良ぎらいだけど面食いな私VS超イケメンな不良
11,かよわく、かわいく
顔の横にせまるスニーカーが目に入っているのに、腕が重くて防御が遅れる。
一緒に顔も背けながらなんとか上段蹴りに耐えると、足を引いた
それは見える。見えるのに……。
どうして体がついてこないの?
……なんて、心のどこかでは分かっている。
「っ……」
みぞおちに食いこんだこぶしに息が詰まって、いつもはかんたんにたおされたりしないのに、
大我先輩は私の前にたたずんで、「どうした?」と声を落とす。
「こんなものじゃないだろ」
「……っ」
今さら、だよね。
分かってる。
今さらかよわいフリをしたって、大我先輩は私がかよわい女子じゃないってこと、もう知ってるもの。
私はうつむきながら、えりにとめた校章を外して、前に突き出した。
「負けは、負けです。どうぞ」
「……
ジャリッと音がして、地面にひざをつく大我先輩の足が見える。
「私じゃ……優衣先輩みたいに、かよわくてかわいい女子にはなれないんです」
「……なにを言ってるんだ?」
「これじゃ、女子として見られなくて当然ですよね。1年生のトップになんてなってしまいましたし……」
「……真陽は、女だろ」
その言葉にドキッとしたけど、ゆるく首を振った。
生物学上は女性とか、そういうことを言ってるんでしょ、大我先輩は。
「大我先輩に好かれる女子になりたかったです。空手をやってる私では、むりかもしれませんが……」
「……」
「校章、受け取ってください」
校章を手のひらに乗せたまま、もう一度差し出す意思を言葉にすれば、大我先輩の手がおおい被さって、腕を下げさせられる。
「俺は、真陽が好きだ」
「……えっ?」
今の、聞き間違い?
おどろいて顔を上げると、目の前にしゃがみこんだ大我先輩は、まっすぐ私を見つめていた。
「強い女だから、興味を持った。信念を持って、こぶしを振るう相手をえらんでいるのも。俺の話を聞いて、歩み寄ってくれたのも」
「……え?」
「心まで強い女だと思ってる。明るいところも、よく笑うところもかわいいし、俺の顔を見て赤面するのも……かわいい」
「かっ……!?」
かわいい!? 大我先輩がかわいいって言った!? 今!? 私のことを!?
照れるように目をそらした大我先輩にキュンとしながら、私は赤面してまくし立てる。
「で……でもっ、私は優衣先輩みたいにかわいくないし、かよわくもないのにっ……大我先輩、優衣先輩のことが好きなんでしょう!?」
「は……? 別に、
「でも、優衣先輩にはやさしい言葉をかけるじゃないですか! “えんりょなく頼れ”とか“味方してやる”とか! 私には言ってくれないのに!」
「……それは、笹森がここでやっていくだけの力を持ってないからだろ」
「本当にそれだけですか!? あんな美少女なのに好きじゃないって言えるんですか!?
「いや……笹森は
「へっ? 付き合った? 優衣先輩が? 遠藤先輩と!?」
なにそれっ、ショックなんだけど!!
えっ、優衣先輩、不良なんかと付き合っちゃったの!?
美少女が!! 女性版顔面国宝さまが!!
「あぁ、先週。
先週の痴話ゲンカって……もしかして、優衣先輩と大我先輩がおどり場で話してたときのこと?
優衣先輩が遠藤先輩から離れたがってたって……恋のあれこれだったの!?
「そんな……ショックです……美少女先輩が……」
「……笹森に
大我先輩は心なしかあきれ顔で、放心している私を見る。
それとこれとは別だと言いたい。
……でも、ってことは、大我先輩、本当に私を……?
「ほ……本当に、私のことが好きなんですか……? 私、本当にかわいくもないですし、そこそこ強いですよ……?」
「好きだ。強いところも、かわいいところも」
「っ……ちょ……ちょっと、待ってください……! そのお顔で“好きだ”とか言われると、心臓が……っ!」
真顔の大我先輩に近距離で見つめられているこの状況、真面目に私の心臓がはれつしかねない。
まっかになって、ずり、とうしろに下がると、大我先輩に一歩距離を詰められた。
「真陽は?」
「好きですもちろん大好きですっ!」
「……俺の“顔”が?」
「それもそうですけど大我先輩がっ! 私、恋! してしまいました!」
目を細めて聞かれ、勢いよく答えると、大我先輩は、ふっと、かすかに笑う。
さけび声がもれそうな口をとっさに両手で押さえると、体がうしろにたおれてしまって、大我先輩の手に背中を支えられた。
「◎$♪×△¥●&?#$!?」
「……なにを言ってるのか、分からないが。俺たち、“付き合う”ってことでいいな?」
「!!」
私はドッドッドッとひびく心臓の音を聞きながら、コクコクコクとうなずいた。
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