不良ぎらいだけど面食いな私VS超イケメンな不良
10,強い女子
「な……っんだ、てめぇ、ナマイキな……!」
一瞬ひるんだチンピラたちだったけど、すぐに逆上して
「兄さん!」
「こらっ、暴力にうったえるなんて最低ですよ!」
「
大我先輩が2人を相手にするのを見ながら、残りの1人のこぶしをいなして、腕をひねり上げると、チンピラからうめき声が上がった。
大我先輩が相手したチンピラたちも、一撃で沈められたらしい。
「お友だちを連れて、今すぐ帰りなさい」
「くっ……なんなんだよ、こいつらっ……!」
腕を解放すると、チンピラは文句を言いながらたおれた2人を起こして、3人で肩を組みながら去っていった。
大我先輩が言う通り、どうやらこの街は治安が悪いみたいだ。
自分の足で歩けたってことは、大我先輩も手加減したみたいだし……怒るに怒れないなぁ。
「すごい……兄さんも真陽先輩も、ありがとう」
「いや。けがはないか?」
「うん、大丈夫。……真陽先輩、よかったらうちに来ませんか? 兄さんはすぐバイトに行っちゃうけど、なにかお礼がしたいから」
「いえ、当然のことをしたまでです。お礼なんていりませんよ」
「そうですか……真陽先輩って強いんですね。大の男をやりこめちゃうなんて」
「子供のころから空手をやっているので――」
こういうところが、大我先輩から“タイマンしろ”って言われてばかりで、
もしかして私、大我先輩に女子として見られてないとか!?
「へぇ、空手! 兄さん、知ってた?」
「あぁ」
気づいてしまった可能性にショックを受けて、私はそのまま2人と一緒に帰りながら、ふたたびもんもんと頭を悩ませた。
****
『
『
そんな……大我先輩!?
『好きだ、笹森。――いや、優衣。俺と付き合ってくれ』
「いやーっ!!」
のどの奥から
ゆ……夢か……!!
「うぅ……なんて悪夢でしょう……いえ、現実に起こるかもしれない事態なんですよね……」
私は布団のなかに入ったまま、両手で顔をおおった。
もんもんと過ごすあまり、あれから数日後にはこんな夢まで見るなんて……。
このままじゃ私、大我先輩のお顔を見るだけで泣き出しちゃうんじゃ……?
そんなのダメだ、絶対。
こういうときは体を動かして頭を空っぽにしないと……。
「……でも、今は組手に付き合ってくれる人なんて……あ……」
ふっと頭に浮かんだ顔にドキッとしながら、私は体を起こす。
「すみません、お父さん……これは正しくないことかもしれません」
今は離れた家にいる父にあやまりながら、私は心を決めた。
大我先輩の“タイマン”、受けよう。
その後、いつも通り身支度をして、1人暮らしを心配した父によって定期購入されている、栄養バランスが考えられたお弁当を食べる。
家を出て、美形3兄弟と一緒に登校し、
「大我先輩。よければ今日、手合わせをしましょう」
「……なに?」
「悩みがあるんです。こういうときはいつも組手をして頭を空っぽにしていたので、どうしても体を動かしたくて」
大我先輩はクールな瞳でじっと私を見つめて、うなずく。
「分かった。本気でやってもいいんだな?」
「はい。私も手加減なしでお相手します」
「……学校に着いたら、グラウンドで」
「分かりました」
場所の指定にうなずいて、私たちは言葉数少なく、学校に向かった。
自然と緊張してくる体を、深呼吸で落ちつかせる。
きちんと朝から登校してくる不良たちと一緒に校門を通り抜けると、私たちはまっすぐ校庭を目指した。
砂の地面の上で、制服姿のまま試合をするなんて初めてだけど……心の準備はできている。
私と大我先輩は
「俺が勝ったら、校章をもらう」
「はい。……よろしくお願いします」
少し離れて立ち、おたがいに向き合うと、大我先輩はボクシングのようにかまえる。
私も基本のかまえをとって、数秒間視線を
まずはワンツーから、と左こぶしを突き出すと、大我先輩は防御のかまえをとる。
左手を引いて右こぶしを突き出せば、先輩は受け止めきったうえでカウンターのこぶしを振り抜いた。
私もダメージを食らわないように工夫して防御したあと、
「……」
片腕で防御した大我先輩のするどい瞳と視線が交わって、下から突き上げられたこぶしを、半歩うしろに下がって
そのとき、本当に不意に。
校庭に面した教室の窓に、ミルクティー色の髪が見えて、視線が上に吸われる。
4階の教室で、遠藤先輩に笑いかけている優衣先輩が見えたとき、私の体はズンッと重くなった。
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