禁断の想いを、演技に隠して。
8,本当の告白
つまり、今日からは、もう
……大丈夫、あの台本のようにやればいい。
「佐々木先生。私だって、演技が上手いほうじゃありません。“特別なこと”をしていたのは、私のほうです」
「
前髪がすこしかかったメガネの奥で、佐々木先生はパチリと目を丸くする。
今まで何回も告白してきたのに、“演技だから”ではごまかせない状況に、
すー、はー、と深呼吸をして、グッと手をにぎりながら熱い顔を佐々木先生に向ける。
「私、ずっと本気でした。名前がおなじなのは、ぐうぜんじゃありません。佐々木先生と……“
「……え?」
「
祐介先生はポカンと口を開けて、おどろいた顔のまま私を見つめていた。
ドッドッとうるさい
私はもう一度深呼吸をしてから、
「――好きです。私は祐介先生のことが、大好きです。台本読みを通じて、がまんできないくらい、気持ちが大きくなりました」
「藤田、さん……」
「生徒と先生だから、許されないことだって分かってます。それでも……っ、私と付き合ってください、祐介先生!」
ガバッと頭を下げて、ふるえる右手をまっすぐに差し出す。
1秒、2秒、としずかな空気が痛くて、泣きそうになりながら、右手を伸ばし続けた。
「……藤田さんを、傷つけたくない。その気持ちに
「っ……祐介、先生……」
台本のセリフをなぞった言葉に、どんな結論が続くのか分からなくて、怖くなる。
ことわられるのかな……。
ううん、ことわられる確率のほうが高いはず。
先生に告白してOKしてもらえるなんて、ありえないもん……。
「本気の気持ちをこめてたのは、俺も一緒。……ふつうのデートも、できないよ。恋人らしくできる時間だって、ほんのわずかだ。それでもいい?」
3秒経ってから顔を上げる。
祐介先生は、真剣なまなざしで私を見つめて、すこしほほえんでいた。
「……はい。はい……!」
「それじゃあ……俺と付き合ってください、
にっこりと笑って、祐介先生は私の右手を両手でにぎり返す。
伝わる体温も、大好きな先生の声でつむがれた言葉も信じられなくて、涙がこぼれた。
「よろこんで……!」
「ふふっ、泣かないで」
祐介先生は片手を離して、私の涙をぬぐう。
そのあとで、ポンポンと頭をなでてもらえたのもうれしくて、ますます泣きたくなった。
「“祐介さん”、好きです……っ」
「俺も好きだよ、愛さん」
“愛さん”。
ただの先生じゃ、名前でなんて呼ばない。
それに、ちゃんと言葉にして“好き”って言ってくれた。
私はいよいよ
禁断の想いを、演技に隠して。
夢を見たいと望んだ結果、夢みたいな現実を手にすることができた。
イチャイチャできる時間なんて、かぎられてる。
学校で顔を合わせたって、私たちは生徒と先生。
それでも、両想いだって何度でも実感できるこの秘密の関係は、私の人生で一番の幸せだ。
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