邪神 の花嫁 は、金目当ての傭兵 にさらわれる
5,孤児院 で見た顔
荷馬車で王妃殿下から逃げ、入り組んだ道を利用して殿下を振り切ったあと、私たちは身を隠しながら体を休めた。
目立つ荷馬車を手放し、街で調達した平民らしい服に着替えて、1日かけて王都を出たのが昨日のこと。
私は今、王都にほど近い街の、とある
「ねぇ~っ、わたしもだっこして、お兄ちゃん!」
「なぁ見てよっ、おれ背が伸びたんだ!」
「追いかけっこしよ! ねぇねぇ~っ!」
「わかったわかった、んな一度に言うなって。ほら、全員相手してやっから」
孤児院の裏庭で、元気な子どもたちに かこまれているのは、
あらあらしい雰囲気がありながらも ととのった顔には、先ほどからずっと笑みが浮かんでいる。
犯罪
昨日1日彼に助けてもらったこともあって、思いのほか わるい人じゃないのかも、と思ってしまう。
「グレンがこうして、女の子を連れてきたのは初めてです」
とつぜん横から話しかけられて、孤児院を訪ねてきたときに
“グレン”っていうのは……もしかして、彼のこと?
「か……彼は、よく、この孤児院に……?」
城から連れ去られて丸1日経った今でも、人と話すことにはまだ慣れない。
ずっと一緒にいた彼……グレンさんとは、すこしスムーズに話せるようになったけれど。
となりにならぶ横顔を見つめると、院長先生は にぎやかな声が絶えないグレンさんの周りをながめながら、おだやかに答える。
「今は、たまに訪れては、ポンと大金を寄付してくれています。グレンは、ここで育った子の1人なんです。昔から、やんちゃだけど仲間想いの子で……」
そう……なんだ。
裏庭の中央にいるグレンさんのほうへ視線を移すと、彼はニカッと笑って、近くにいる子どもの頭をワシワシとなでていた。
「国からの
「寄付……」
もしかして、彼がお金をかせいでいるのは、育った孤児院を支援するため?
城に忍びこんで私をさらうくらいだから、仕事はかなりえらばないみたいだけど……。
それもこれも、この孤児院のためなら、グレンさんは意外といい人……なのかも。
「……ですが、心配もしているんですよ。昨日発表された、お姫さまをさらった指名手配犯にかけられた
「ど、どうして、ですか?」
ドキリとして尋ね返しながら、もしかして院長先生はグレンさんが受けている仕事の内容を知っているのかな? と、その横顔に視線を向ける。
“心配している”という言葉どおり、眉を下げてすこし顔をくもらせた院長先生は、グレンさんのほうを見ながら答えた。
「ああいった指名手配犯を捕まえたりして、あぶないことでお金をかせいだりしているのでは、と思うと……危険なことは、して欲しくないのですが」
「そう、なの、ですね……」
その懸賞金をかけられている指名手配犯が、グレンさんなのだけれど。
院長先生が想像している内容とはちがっても、“あぶない”仕事をしているのを知っている身としては、言葉に詰まってしまう。
私は院長先生から目をそらすように、子どもたちとあそんでいるグレンさんのようすをながめた。
「えぇ……あぁ、すみません。よけいなことまで話してしまいましたね。あらためて、グレンのお客さまなら
「あ、ありがとう、ございます」
この孤児院で育ったからか、グレンさんは院長先生にかなり信頼されているらしい。
指名手配されてしまっているから、もともと私が彼にさらわれたことは言うつもりがなかったけれど……。
この孤児院では、グレンさんが仕事をえらばないことについては、口を閉ざしておいたほうがよさそう。
そう思いながら、私は ほほえむ院長先生に頭を下げて、小さな背中が孤児院のなかへもどっていくようすを見送った。
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たくさんの子どもたちに かこまれていたグレンさんが、みんなを満足させて孤児院のなかへもどったのは、
院長先生から応接室を使って話していいと言われ、2人で応接室のソファーに腰を落ちつけたあと、グレンさんは「で」と私に視線を向ける。
「どうして王城にもどらなかったんだ? 俺は姫さんをどこに届ければ、この
愛想がないわけではないけれど、子どもたちとあそぶ姿を見たあとでは、“他人”としての距離を感じる顔つき。
小首をかしげて尋ねるグレンさんを見て、私は目を
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