悪女、悪魔に転生する。
4,悪女、タマシイを狩 る
強風にみまわれながらすさまじい速度で落下する――ことなく、ごまのように小さな街にグングンせまりながらも、ほおに受けるのはそよ風レベル。
さすが自然をあやつる悪魔、器用なものだわ、と思っているあいだに、エヴァンは地上へ降りて、ふわりと屋根に着地した。
「シーラ、こわかった? ごめんね」
頭をなでながら声をかけられて、あたしは気づかぬうちにエヴァンのシャツをギュッとにぎりしめていたことに気づく。
「は、はじめてだかりゃよ」
「うん、びっくりしたね」
あたしの強がりを受け流して、よしよしと頭をなで続けるエヴァン。
子どもあつかいされるなんて、プライドが傷つくわ……!
くっ、と奥歯をかみしめると、エヴァンは「見てごらん」とやさしくあたしに語りかけた。
「あれが人間だよ。俺たちよりも体が弱くて、寿命も短いけど、男性体も女性体もたくさんいるんだ」
「……」
「シーラが母上以外の女性体を見たのは初めてかな? 悪魔には なかなか女性体が生まれないからね」
話しかけられるまま、屋根の下に視線を向けると、ファンタジーアニメでしか見ることのない服装をした人々がたくさん道を行き
それを見て、なつかしい、という思いと、あたしが知ってる“人間”はどこにもいないんだ、っていうさみしさが同時に湧き上がってくる。
「うーんと……あぁ、あの人間が
あたしが足元の光景を見て
黒いつめの指が
「あのおばしゃんがいいの?」
「うん。すぐに見つかってよかったね」
「ふーん……おろちて」
タマシイの基準はよくわからないわね、と思いつつ、エヴァンの腕をペチペチたたく。
屋根の上に下ろしてもらったあと、あたしは周りをキョロキョロと見て、凶器になりそうなものを探した。
屋根のふちギリギリまで近づいて、下のほうも のぞくと、ちょうど出窓のところに植木ばちが置かれているのを見つける。
でも、子どもの体じゃ手を伸ばして持ち上げるのはむずかしいわね……。
「えばん、ありぇ、うかしぇて」
「うん? あの植木ばち?」
初めてだもの、これくらいのサポートがあっても許されるでしょ。
顔を上げて、すぐうしろまでついて来ていたエヴァンに手伝いをたのむと、エヴァンはすぐにふわりと植木ばちを浮かせてくれた。
充分手の届く高さに来た植木ばちを持って、「ん、しょ」と頭上に振りかぶる。
「シーラ、なにをするの?」
「こりぇ、なげて、ぶつけりゅ」
「え」
あのおばさんは もうすぐあたしたちの目の前を通りすぎる。
そのタイミングをねらって、思いっきり投げれば……!
同情も
「にゃによ?」
「ちょくせつ殺すなんて原始的なことをしなくても、ほら、見ててごらん」
しかたなく、植木ばちを下ろして、エヴァンが指さす道の先を見る。
おばさんの向かいから、1台の馬車が走ってきていた。
あれがなに? と眉をひそめてながめていると、馬車のすこし先にある手前側の横道から、子どもたちが笑って飛び出す。
「あっ」
あぶない、
思わず目を見開いて、おなかに回ったエヴァンの腕に手をかけたけど、馬車は子どもたちを
「きゃーっ!」
ホッと肩の力が抜けたのもつかのま。
今度はその馬車が、道のはしを歩いている人たちに突っこむ形になって、だれもが
ただ1人、片足をすこし引きずっているあのおばさんだけが、逃げ遅れて――
「あぶにゃいっ!」
「シーラ!?」
自分でもどこから湧いたのかわからない力でエヴァンの腕を外し、突き動かされる
あたしは馬車との距離がまだすこしあるのを横目に確認しながら、おばさんのもとまで走って、長いスカートにおおわれた足にタックルした。
思った以上にあっけなくおばさんが突き飛ばされたのは、やっぱり悪魔の体ゆえかもしれない。
ほかの逃げた人たちと同様に、馬車から充分離れた道の先までおばさんが転がっていったのを見て、ちょっとやりすぎたかも、と
けど、すぐに横からパカラッパカラッと馬の足音が聞こえて、ハッと左を見た。
あたしよりもはるかに背が高い馬2匹が、馬車を引いてせまってくる。
また轢かれて死ぬの、と息を飲み、あたしはギュッと目をつぶって頭を
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