Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第1章 黒街 から出るための勝負
8,帝 の知名度
ひざの上に置いたスクールバッグを持ちなおすと、帝さんがぽつりと声を発する。
「気まぐれだ」
「え?」
気まぐれって、なにが?
きょとんと首をかしげてしばらく考え、もしかしてさっきの質問の答え?と気づくと、顔がゆるんだ。
聞いちゃいけないことだったみたいなのに、答えてもらえてうれしい。
でも……気まぐれで何年も赤の他人を家に住まわせるのかな?
うーん、と考えていると、車が止まった。
「乗せてくださってありがとうございました。行ってきます」
「あぁ」
帝さんと運転手さん、2人に向けてお礼を言ってから、私はドアを押し開けて車を降りる。
顔を上げると、校門
まぁ……注目を浴びるのもとうぜんかぁ。
なにせ國家の帝さんが乗ってる車だし、と視線を受け流すように振り返って、すこしかがみながら車中の帝さんを見た。
「帝さんも、行ってらっしゃい。どこかで
笑顔であいさつすると、帝さんは横目に私を見てすこしうなずく。
後部ドアを閉めて数歩うしろに下がれば、黒ぬりの車はまっすぐ走っていった。
見てないとは思いつつ、手を振って帝さんたちを見送ってから、私は校門のほうに体を向けて歩き出す。
「ねぇ、帝さま見えた?」
「見えた見えた、國家の人はやっぱりオーラがちがうよね~……!」
「それに容姿も別格!
「ね! でも……」
「「おそれおおすぎて恋とかできない~」」
あちこちからひそひそと聞こえてくるうわさ話を聞き流して歩いていると、帝さん効果の
「あの女子だれだ? 帝さまの車に乗ってたとか何者だよ」
「おまえ知らねぇの? 中学のときから帝さまのカジノで はたらいてるっていうやつだよ」
「はぁ? なんだそれ」
うぅん、注目を浴びてた時期は すぎたのに、またしばらく注目の的になっちゃうかも……。
私自身は すごくもなんともないのに、いたたまれない……。
好奇心に満ちた視線をちくちくと感じながら
「帝さまに送ってもらえるとか、
「
乾いた笑みを浮かべながら声をかけてきた友だちに、「おはよ」とあいさつする。
「ただ通り道だっただけじゃないかな。それより聞いてよ、ライブの件、やっと帝さんと話せたのに外出許可がもらえなくて……」
「わかってるけどぉ……」
はぁ、とため息をついて、茜と
黒街に連れてこられた原因を解消する以外で、
でも、黒街の外を
私が外を賭けて勝負したのは4年前だから、もう再挑戦する権利はあるけど……。
「勝負に勝てる自信がないよ~。私、賭けに弱いし……」
「それでも、そのVのライブに行きたいなら がんばるしかないんじゃん? あたしはどっちでもいいけどさ」
「うぅ……そうだよね」
帝さんに外出許可をもらえるお願いのしかたもわからないし、ライブに行くためには、やるしかないんだよね……。
「茜……私、がんばるっ」
「そ。まぁ、がんばれば?」
「うん。博ツキくんの強運をちょっと分けてもらえますように~……!」
すりすりと手を合わせて念じると、茜に「目閉じてたら転ぶよ」とツッコまれた。
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日中は高校生の私も、夜になればGold Nightのディーラーになる。
「「おぉっ」」
遠くのテーブルから、がやっと
通りすがりにブラックジャックのテーブルを見ると、高校生とは思えないほど店内に溶けこんでいる
さすがのよゆう。
さらに店内を視線で1周すれば、カジノフロアのすみにあるバーの横で、
あの人は黒街で一番人気な歌姫さん。
去年からGold Nightの専属アーティストになって、集客に一役買っている。
一度生で歌を聴いてみたいんだけど、おなじ場所で はたらいていても、歌姫さんの歌を聴ける機会ってなくて……。
うしろ髪を引かれる思いで視線を外して、私はカジノフロアから
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