Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第4章 隠されたひみつと えらんだ欲望
7,予定外の出発
今日はこれから仕事があるけど……でも、この機会を
今
「
ライブを観終わったら、絶対にすぐ帰ってくるので!
ぎゅっと目をつぶって、心のなかでそうことわってから、私は許可証を取り出し、お兄ちゃんの手紙を一緒に持って、自分の部屋にもどった。
「すぐに荷造りしなきゃ。それに、帝さんにも休みの連絡を入れて~……っ」
帝さんの部屋から持ってきた紙類をつくえの上に置いて、しまってあったリュックを引っぱり出す。
スマホを取り出し、連絡先のなかから帝さんの番号をえらんで電話をかけた。
呼び出し音を聞きながら、スマホを耳と肩ではさみ、クローゼットを開けて着替えを用意する。
《なんだ?》
「あ、もしもし、帝さんっ。こんばんは、おつかれさまです。あの、とつぜんなんですが、今日と明日、仕事をお休みさせていただきたくて~……っ」
《……理由は?》
「え、えぇ~と、そのぉ、きゅ、急に体調をくずしてしまって……!」
《……》
う、苦しい言いわけだったかなぁ~……っ。
無言の帝さんに胸が痛むなか、手だけは動かして、必要な荷物をつぎつぎリュックに詰めていく。
《わかった》
「えっ。あ、いえ、ありがとうございます! ごめんなさい、あの、またあらためて電話させてください」
《……あぁ》
帝さんの返事を聞いて、私はもう一度「ごめんなさい」とあやまり、あいさつをしてから電話を切った。
着替えとさいふ、それから身分証代わりの生徒手帳をリュックに詰め終わったあと、私はたなを開けて、ライブのチケットを取り出す。
許可証とお兄ちゃんの手紙を合わせた、その3枚の紙を大切にリュックに入れてから、私は私服に着替えて家を飛び出した。
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Side:
《ごめんなさい。それじゃあ、あの、またあとで》
ごそごそと物音を立てながら通話を切った
退屈しのぎに、と家から回された、
《はい。どのようなご用命でしょうか》
「結花はいるか」
《はい。10分ほど前に、忘れ物をしたとおっしゃり、ご帰宅されております》
「結花に動きがあれば知らせろ」
《かしこまりました》
電話を切ってしばらく。
今回もけっきょく退屈しのぎにならなかった仕事を済ませて車に乗り込んだとき、家から折り返しの電話がかかってきて、すぐに応答した。
「なんだ」
《つい先ほど、お
「そうか」
もとから急な体調不良という自己
仕事を休んでどこへ行く気なのか。
報告を受けて電話を切ったあと、今度は
《はいはい、今回はどんなご命令でしょうか?》
「結花が今日と明日、休みを
《え……はい、
「いや」
《承知しました。はぁ~、こんなタイミングで自由行動とは、ゆいちゃんはことごとく想像のななめ上をいきますねぇ。予測がついたらご連絡します》
軽口を聞き流して「あぁ」と答え、通話を切った。
想像もしないことをするわりに、回されてくる“仕事”のようにその結果で害をもたらすわけでもない。
今回も今までとおなじ、ささいな理由での行動だろう。
だからこそ、俺に隠してなにをするつもりなのか、興味がある。
『帝さん、好きです……っ。絶対、死なせたりしませんから……待っててください……っ』
首のうしろに回された腕。
脈拍の速い、熱い体で抱きついて、初めて結花が口にした言葉。
どくりと心臓が音を立てた、そんな体の変化をもっと味わいたくて、またいちだんと結花をほっする気持ちが強くなった。
結花からの着信履歴をながめて、今回は なにをするのか予想していた俺は、
《帝サマ、ゆいちゃんですが、おそらく――西の関所に向かっています》
「……関所?」
ここから出る許可証も、
許可していても俺の部屋に入ってこない結花が、俺の部屋をあさった?
……いや、どうでもいい。
「西の関所に向かえ。今すぐ」
「かしこまりました」
――
結花が、俺のもとから逃げるとは……。
ざわつく心に眉根を寄せて、俺はフロントガラスの向こうを見すえた。
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