Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第4章 隠されたひみつと えらんだ欲望
6,帝 の部屋で見つけたもの
そんな欲望が、あの日から生まれてしまった。
「はぅ……」
2日経った今でも、あのときの帝さんを思い出したら顔をおおわずにはいられなくて、私は熱いほおを両手で押さえた。
今日も学校に行って、6時間の授業を受けた帰り。
金曜日だから仕事があるのだけど、私はとちゅうまで一緒に歩いてきた
「はぁ!? 前はこの値段だったでしょ!」
「あれは特別価格、また買いたいなら本来の適性価格を払ってもらわないとなぁ?」
「人の足元見てっ!」
道ばたの話し声を聞き流しながら、感情をあらわにする帝さんの
帝さんに愛してもらうとともに、帝さんの命を救うべく、昨日は顔を合わせたら私からキスをしてみたりもしたのだけど。
ドロップハートをしていたときの、“どうやったら帝さんを落とせるんだろう”っていうなやみは、まだまだ続きそう。
この目標に挑戦し続けるためにも、私は明日にせまった
本当は、今日
帝さんのことがあるから、がんばって明日の日帰りを目指すつもり。
そのためにも、今日のうちに帝さんの部屋からあの許可証をこっそり
帝さんが自殺しちゃうっていう、帝さんの
これまでお祝いしてるところを見かけたことがないから、その日がいつかは わからないんだけど……たぶん、1日出かけるくらいは大丈夫、だよね?
今日の朝になって雨が上がり、大きな水たまりを残している道路でちょっとあそびたいという気持ちをおさえて、私は足早に家へ帰った。
《お
電動でしか動かない大きな
私はカメラに向かって、えへ、と笑った。
「ちょっと忘れ物をしてしまって」
《さようでございますか。ただいま門扉をお開けしますので、少々お待ちください》
「はい、ありがとうございます」
お礼を口にしてすぐに、門扉がゆっくりと開き始める。
私は門扉のあいだを通って家に入り、
「お帰りなさいませ、お嬢さま」
「ただいま帰りました。あのぉ、帝さんはいますか?」
玄関を開けてなかに入ると、出迎えに来てくれた使用人さんが きれいにおじぎをする。
顔を上げた使用人さんは、「いえ」と答えた。
「ご主人さまは午後から外出されております。そのままカジノへ向かわれるそうですよ」
「そうですか……わかりました。ありがとうございます」
ちょっと残念だけど、Gold Nightに行けば会えるだろうし。
それよりも、今ならかんたんに帝さんの部屋へ入れそうでよかった。
「お車をご用意しておきましょうか?」
「うーん……いえ、家からなら近いですし、まだ明るいので歩いて行きます」
「かしこまりました。ご用のさいは おもうしつけください」
「はい」
使用人さんに笑顔でうなずいて、2階の自室を目指す。
スクールバッグを置いてから、帝さんの部屋につながる扉をそっと開け、「失礼します……」とことわりを入れて なかにおじゃました。
「えぇと、この前はサイドテーブルにあったけど……」
窓から外の明かりが入っていて、電気をつけなくても探しものにはこまらない部屋のなかを進み、ベッドに近づく。
数日経っているから当然と言えば当然だけど、サイドテーブルにあの
あれがしまわれそうな場所は、と部屋のなかを見回して、つくえや たなに近づく。
失礼しますと心のなかでことわりを入れながら、あちこち引き出しを開けてなかをのぞいていくと、5分くらい経ってから当たりを引いた。
「あった、この書類……! って、あれ?」
さいわい封筒にしまわれず、紙を伸ばした状態で引き出しのなかに しまわれていたからすぐに見つけることができたのだけど。
許可証の上に、見覚えのある別の封筒が置かれているのを見て、首をかしげながらそれを手に取る。
シンプルな青い封筒の表には私の名前が書かれていて、裏には[
「やっぱり……お兄ちゃんの手紙だ!」
ひさしぶりに見た封筒とお兄ちゃんの文字にびっくりしながら、いつもどおり口が開かれている封筒を開けてなかの手紙を取り出す。
折りたたまれた手紙をぴら、と広げると、なつかしいお兄ちゃんの文字で、びっしりと文章が書かれていた。
[
[11月7日まで、毎日16時から19時のあいだ、僕か父さんが西の関所の前で待ってるから、この手紙が届いていたら来てほしい]
「んぇ……っ。7日って、今日まで!? 今は……」
壁にかかっている時計を見ると、もう16時半をすぎている。
手紙のとおりなら、今の時間、お兄ちゃんかお父さんが黒街と外をつなぐ関所の前で、私を待っていることになるけど……。
どうしよう、と
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