Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第4章 隠されたひみつと えらんだ欲望
4,結花 の心
自分の心にしたがって、やりたいように……。
私が今したいことって、なんだろう?
「……
「ライブ?」
一番しっくりくる欲望をぼそっとつぶやくと、
私は顔を上げて、晴琉くんに笑ってみせる。
「推しのVライバーが、
「……そっか。それで、勝負をしたんだね」
「はい。だから、明々後日のライブに行ってきます」
「……ん。帝さまにはバレないように準備しなよ。引きとめられるかもしれないし、もしかしたら外に出れないようにされるかもしれないし」
だまって話を聞いていた
その言葉を聞いて、私は はっとする。
「そ、そっか……! 帝さんにバレないように……え、そんなことできるかな私~……っ!?」
「外に出たいならそうするしかないでしょ。しっかりしろ」
「うぅ……がんばる……!」
かっとうしながら決意を固めると、茜に ばんっと背中をたたかれた。痛い。
「
「え、ずれてるの、私……?」
「そーゆーとこ。あのね、わかってる? 外で“黒街に住んでた”とか言ったら、秒で
「えぇ……そうなの」
黒街に住んでただけで……? 私、ふつうに暮らしてる
うーん、と想像ができずに首をかしげていると、私たちのやりとりを見ていた晴琉くんが くすっと笑う。
「結花さんはSNSとかもやってないから、外のことあんまり知らないんだっけ。黒街の印象はかなりわるいから、外では隠しておいたほうがいいよ」
「わ、わかりました……」
晴琉くんにまでそう言われたら、気をつけないと。
外では黒街のことを話しちゃだめ、うん、覚えた。
2人の
ひとつ、ちゃんと言っておかないとね。
「茜。私、博ツキくんのライブに行ってくるけど――」
****
私は日曜日と水曜日がお休みの日だから、水曜日の今日は
いきおいは弱まったけど、朝から降り続けている雨は放課後もやんでいなくて、明日も降ってるかもなぁ、なんて思いながら、カサをたたんで家に入る。
ワインレッドのスーツを着ているから、これからGold Nightに出勤するところみたい。
「おはようございます、帝さん」
「あぁ」
ライブに行くことは隠す、ライブに行くことは隠す……。
わ、私、変な顔してないかな。
どきどきしながら笑顔を向けると、帝さんは私に近づいて、頭に手を伸ばしてきた。
な、なに……っ!?と肩がはねたけど、帝さんは
は、ぼさぼさになってたかな、はずかしい……っ。
「雨の日はボリュームがあるな」
「うぅ、すみません……お見苦しいものを」
「いや」
帝さんはいつもどおりの声で答えて、髪に触れていた手を私のあごに移した。
きょとん、とする私の顔をすこし持ち上げて、流れるようにキスをする帝さんに、ばくっと遅れて
し、使用人さんもいる前で……っ!?
瞬時に顔が熱くなった私から唇を離した帝さんは、すこしだけ口角を上げて私のほおをなでた。
「今日はゆっくり休め」
「は、はぃ……」
か細く答えた私の顔から手を離して、帝さんはとなりを通過する。
案の
「あ、あのぉ、帝さん……すこしお聞きしたいことがあるんですが」
「……なんだ?」
うしろを向いて呼び止めると、帝さんは足を止めて振り向いてくれる。
私は帝さんのそばにいる使用人さんをちらりと見て、「そのぉ」とおずおず言った。
「予言のことで……」
「……」
帝さんは私を見つめたまま「下がれ」と使用人さんに命令する。
使用人さんは頭を下げて、階段のほうへ足早に去っていった。
「なにが聞きたい?」
「えぇと……予言って、もしかしてまだ、終わってないんですか……?」
「……どうして終わったと思う?」
逆に尋ねられてしまって、ぱちぱちとまばたきをする。
「その……私が
帝さんを見つめておずおずと私の考えを説明すると、帝さんは目を閉じた。
それから、ふぅと息を吐いて、しずかに私を見つめる。
「“予言”された俺の死の原因は、――俺自身だ」
「……え?」
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