Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第4章 隠されたひみつと えらんだ欲望
3,どしゃ降りの日
ざあざあと降る雨が、ときおり窓にも
「
「……あ。なぁに?」
寝不足なせいで重い頭をとなりに向けて、横の席を乗っ取っている茜を見る。
「今日は朝から元気ないじゃん? ずっと ぼーっとしてるし、どうしたの?」
「ん……うん」
「……なに、ライブに行けないショックが遅れてきたとか?」
「ライブ……」
そうだ、ライブ。
私は茜の腕に手を伸ばして、黒いセーラー服をつかんだ。
「茜……ちょっと来てくれる?」
「……ん。
言わずとも人に聞かれたくない話だと察してくれた茜に力なく笑って、一緒に教室を出る。
茜と一緒に来た昇降口は、人がいなくてしずかなあまり、教室よりも雨音が大きくひびいている。
「それで、どうしたん?」
「……あのね。昨日の夜、っていうか、今日の夜中なんだけど。私、帝さんの部屋で見つけちゃったの」
「……帝さまの部屋に結花が入れることはいったん置いといて、なにを?」
茜は腰に手を当てながら、いつもより心なしか落ちついたトーンで聞き返した。
私は目を閉じて、ゆっくり口を開く。
「お父さんが、
「え……」
「私、もう
帝さん、文化祭に来てくれたときにはもう、知ってたのかな?
それとも、帝さんも文化祭から帰ったあとに知ったのかな。
「帝さんに、隠されてたのかな……私、どうしたらいいんだろう」
今日は、11月5日。もう、あの許可証の日付から、3日も経ってる。
うつむいてちょっとよごれた床を見つめると、茜のそっけない声が聞こえた。
「外、行きなよ。ライブも行きたかったんでしょ?」
「でも……帝さんは」
「あたしは帝さまと かかわったことなんて ぜんぜんないから、相談するなら
茜はそっけなくそう言って、私から離れる。
「待って、茜。……怒ってる?」
「はぁ? 怒るわけないでしょ」
顔を上げて呼び止めると、茜は私に背中を向けたまま答えた。
でも、やっぱり声色がいつもより冷たい気がする。
「ごめん……」
「だから、怒ってないって。……黒街から出られる人間を引きとめちゃいけないし」
「え……」
「親友だからこそ、あたしは結花が外でしあわせになること、願ってあげなきゃでしょ」
目を見開いて、私は茜の背中を見つめた。
階段に向かって歩き出す茜に、あわてて声をかける。
「待って、茜。私、やっぱり茜にも相談したい。
「……わかった」
茜は一言答えて、すこしのあいだ止めていた足をまた動かした。
私は
しばらく1人で待っていると、階段のほうから2人分の足音が聞こえてきて、すぐに茜と晴琉くんが姿を現した。
「結花さん、こんにちは。話があるって聞いたけど」
「晴琉くん……あの、私」
昇降口まで来てくれた晴琉くんに、私は眉を下げながらあの書類のことを話した。
茜も私の願いどおり、昇降口に残って、腕を組みながらぶすっと話を聞いてくれている。
「帝さんは、どうして私に話してくれなかったんでしょうか……」
「それは……予言のせいじゃないかな」
「え?」
予言? って、あの?
晴琉くんも帝さんの予言のこと、知ってるんだ……。
でも、あの予言はもう……。
「支配人には、結花さんを手放したくない理由があるんだよ」
「私を……」
晴琉くんはすこし眉を下げてほほえみ、私を見つめてやさしく言った。
「結花さん、
「え……どうしてそれを」
ぱちりとまばたきすると、晴琉くんはにこっとほほえむ。
「行きつけのカフェがおなじでね。彼女にはなんて言われたの?」
「えぇと……私は思うままに行動すればいいって。迷ったら自分の心にしたがうように言われました」
占い師さんに言われたことを思い出しながら答えたあとに、あ、ともうひとつの予言が頭に浮かんだ。
たしか……。
「それから、これから
一波乱って、文化祭のときのことかなぁってなんとなく思ってたけど、今のことだったりするのかな?
晴琉くんを見ると、ぱっちりとしたその目はすこし伏せられて、床を見つめている。
「そっか……うん、だったら、結花さんはやりたいようにやるのが一番いいよ。自分の心にしたがって、ね」
視線を上げた晴琉くんは、私と目を合わせてほほえみ、そう言った。
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