Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第1章 黒街 から出るための勝負
4,一瞬の通知
スマホに表示されていたのは17:21という今の時刻と、アカウントを作ったことで怒られたSNSからの通知。
[
「んぇっ」
いつもならちょうど開店時間とかぶるから絶対にむりだけど、
え、もしかしてチャンスある!?
「どうした? ゆいちゃん」
「え」
最推しVライバー、博ツキくんのワンマンライブ、できれば行きたい。ライブなんて初めてだけど、ものすごーく行ってみたい。
でもうわさによると、チケットってすぐ売り切れちゃってなかなか買えないらしいし……。
「や、なんでもないですよ? 友だちからちょっとびっくりするメッセージが来てて……今アプリ開きます」
「お~」
とりつくろって笑うと、廉さんもへらりと笑い返してくれた。
もしチケットが買えたら、そのときにちゃんと考えてみよう。
そう考えながら、私は10月8日18時、と
廉さんがそばにきて、手元を見られながら、ときに「ここな」と
でも、廉さんに怒られちゃったからなぁぁ……。
かっとうするあまり、「ぅぅぅ」とうなり声をもらしながら、私は赤文字の[アカウント削除]という言葉をタッチする。
パスワードの入力を終えて、アプリの画面が初期のものにもどったのを見ると、物悲しい気持ちになった。
「おつかれさん。今後もちゃ~んと見張ってるから、おいたは しちゃだめだぜ?」
「はぁい……」
「いろいろ制約があって うっとうしいよなぁ。言うこと聞けたごほうびにオニーサンが今日の
「えっ、いいんですか!?」
ぽんぽんと頭をなでられて、目を輝かせる。
いつもはちょっとお高くて手が出せない料理もあるんだよね。
今日はえらびたい放題かぁ、と思うと、
「すなおな反応がかわいいねぇ」
廉さんはくつくつと笑いながら、私の髪をなでる。
私はセキュリティールームに向かったときの不安な気持ちが うそのように、にこにこしながら廉さんと別れ、カジノフロアにもどった。
****
ざわざわとした話し声に満ちたフロアを、無料のソフトドリンクやお酒を持ったウェイトレスが練り歩くのを横目に、私はルーレットへ手を伸ばした。
目の前のテーブルには0を頭に置き、1~36までの数字が横に3つずつならんだ、縦長のレイアウトが白線で書かれている。
0はそのまま、テーブルの緑色。1~36の数字マスは、ルーレットに書かれた数字の背景とおなじ、赤、または黒でぬりつぶされている。
お客さまはこの数字マスにチップを置くことで、
数字列の左右には、1~18のどれかか19~36のどれか、
こんなふうに、ルーレットは1つのレイアウトに全員がそれぞれチップを置いて賭けるから、見分けがつくように専用の色分けされたチップを使う。
カラーチップは7種類しかないので、一度にテーブルにつけるお客さまも7人まで。
「
両手で抱えるほどのサイズはありそうなルーレットの、中央・ホイールヘッドをつかんで反時計回りに回転させたあと、お客さまに声かけをした。
愛想よくほほえんだまま、7人のうち数人のお客さまがレイアウトの上にチップを置くようすを見つつ、
「
球を投入しますと
時計回りにホイールの外側を走っていく球は、さまざまな角度で作られた
残りのお客さまがルーレットを見つめながらチップを置いていくようすをちらりと見て、私もルーレットを見つめた。
赤が出たらライブに行ける、黒が出たらライブに行けない……。
やがて球が数字の上を通りすぎて、いきおいを落としたホイールの内側に転がりこんだら、結果が出るのはまもなくだ。
「
球とホイールのいきおいから、そろそろ落ちると感じた私は、賭けを停止させて、万が一にもお客さまがチップを動かさないように
からからと音を立てて回っていた球は、ホイールの内側に転がりこみ、やがて何度か数字の前に落ちるそぶりを見せて、緑のマスにからんと落ちた。
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