Gold(ゴールド) Night(ナイト) ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―

第3章 予言が引き寄せた恋

13,それぞれの()け方

約2,300字(読了まで約7分)


 プレイヤーにくばられた今回のカードは、3とQで、3点。
 一方、バンカーにくばられたのはKと7で、7点だった。
 一部例外もあるのだけど、両者の下一桁の点数が7以下の場合に、基本、どちらかが追加の一枚を引くことになる。

 今回はプレイヤーが3点で、バンカーが7点のときのルールにしたがって、ディーラーの先輩がプレイヤーに1枚カードを追加した。
 プレイヤーの3枚目のカードはQ。絵札は0点だから、合計は変わらず……。


「プレイヤーが3点、バンカーが7点で、バンカーの勝利となります……勝ったお客さまには、()け金と同額(どうがく)のチップをお渡しします」

「やった……!」


 (みかど)さんにあやかれた~!
 勝ち分として、私はチップを3枚もらい、帝さんは2枚のチップをもらった。
 私はこれで11枚になったけど、帝さんはあっというまに16枚。

 やっぱり帝さん、賭けごともうまいのかも。


Place(プレイス) your(ユア) bet(ベット)


 スピードよく3回目の賭けが始まり、私はもう一度バンカーに、今度は勝ったから1枚減らして、2枚のチップを賭ける。
 バンカーが連勝してるし、流れが来てるんじゃないかな!?
 となりを見ると、帝さんもやっぱりバンカーに、今度は4枚のチップを賭けていた。

 か、賭け金増やしてる……!?
 え、減らさないほうがよかったのかな!?
 わ、私も4枚……はこわいから、3枚にもどしておこう!!


No(ノー) more(モア) bet(ベット). ゲームを、開始します」


 賭けが()め切られる前に、なんとかチップをもう1枚置けた。
 さっそく先輩の手によって、さっ、さっと4枚のカードがくばられる。
 プレイヤーは2と9で、合計が11。ミニバカラでは下一桁の数字を使うから、点数は1点だ。

 バンカーに行き渡ったカードは8と4で、合計は12になる。
 この場合、プレイヤーとバンカー両方にカードを追加するのが決まったルール。
 プレイヤーに追加されたカードは8、バンカーに追加されたカードは2だった。


「ぷ、プレイヤーが9点、バンカーが4点、で……ぷ、プレイヤーの勝利となります……」

「うぅ……」

「……」


 また負けてしまった。しかも今度は3枚のチップを失うことに~……!
 ふるえる手で回収されたチップを名残惜(なごりお)しく見つめて、次はどう賭けよう、と頭をなやませる。


「ぷ、Place, your bet. 先攻のプレイヤー、または後攻のバンカー、引き分けのタイのいずれかに、賭けてください……」


 ちらりととなりを見ると、帝さんはまたバンカーに、今度は5枚のチップを賭けていた。
 今回も負けちゃうかもしれないのに、5枚……!?
 今の手持ちは12枚とは言え、帝さん、(だい)たん……!

 うぅ、私、私はどうしよう……さっきプレイヤーが勝ったから、プレイヤーに賭けてみる……?
 チップは残り8枚……ま、負けたときがこわいから、賭けるのは2枚にしておこう……。


「No more, bet」


 4回目の勝負では、プレイヤーにくばられたカードは10と8、バンカーにくばられたカードは4と7。
 プレイヤーの点数が8だから、どちらにも追加はなし。


「ぷ……プレイヤーが8点、ば、バンカーが1点、で……プレイヤーの勝利、です……っ」


 帝さんが2連敗したせいか、ディーラーを担当している先輩の顔が()(さお)だ。
 私は2枚の払いもどしを受けて、合計チップが10枚。
 帝さんは5枚のチップを失って、合計が7枚に減っている。


「Place, your, bet……」


 でも、帝さんはなんと、次に6枚のチップをバンカーに賭けた。
 賭け金の法則性(ほうそくせい)はまるでわからないけど、帝さんの賭け方を見ているかぎり、もしかして連続しておなじ側に賭けてたほうがいいのかな……?
 そう思って、私もさっきとおなじプレイヤー側に、チップはこわいから、2枚賭ける。

 その結果、5回戦はバンカーが勝って、私は2枚のチップを失い、帝さんは6枚、受け取るところをコミッションで1枚差し引かれて、5枚受け取っていた。
 ミニバカラでは けっきょく8回ゲームをして、プレイヤーに賭け続けた私のチップは6枚、バンカーに賭け続けた帝さんのチップは20枚に。
 他のゲームでもあそんだけど、私はチップを追加で買ってもらったりもしたのに、ぜんぜん かせげず、6等の景品・ミニサイズのお茶をもらった。

 一方の帝さんはあざやかにチップを増やして、1等の景品・文化祭の全店舗(ぜんてんぽ)で使用可能な無料券をもらっている。


「うぅ……ギャンブルってむずかしいです……」

「……ミニカジノでよかったな」


 ミニカジノを出て肩を落とすと、帝さんにもそんなことを言われてしまった。
 たしかに、これがGold(ゴールド) Night(ナイト)だったら軽く数千円は飛んでたかも……!


「おごっていただいたのに、負けてしまってすみません~……!」

「気にするな」

「うぅ……ちょっとさいふを取りにもどってもいいですか……? あまりにも もうしわけなくて……!」

「いい。文化祭でいくら使っても、たいした金じゃない」

「で、でも~……」


 へにょんと顔をゆがめて階段のほうを見ると、帝さんは私の手をつかみ、階段とは反対方向に歩き出す。
 どきっとして帝さんに視線を移せば、無表情のまま気だるげに言われた。


「他に行きたいところはないのか」

「んぇ……えと、じゃあせっかく4階にいるので、晴琉(はる)くんの顔を見に行ったり……とか……?」


 どうやらさいふは取りに行かせてもらえないらしい。
 心苦しく思いながらも、帝さんにも興味を持ってもらえそうな提案(ていあん)をすると、帝さんが横目に私を見る。


「どこにいる?」

「えぇと、たしか1組なので、向こうはじの教室です」


 私はあいかわらず人々がフリーズしていて しずかな廊下(ろうか)の奥を指さし、帝さんを案内するべく、となりにならんだ。


ありがとうございます💕

(※無断転載禁止)

2025/05/04に第3章12話のストーリーを一部変更しました。
・変更内容:ミニバカラにおける帝の賭け方(と、それに影響を受けた結花の賭け方)