Gold(ゴールド) Night(ナイト) ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―

第3章 予言が引き寄せた恋

12,ミニバカラ

約2,300字(読了まで約6分)


 そういえば、(みかど)さんがプレイヤー側に回ってるところって、見たことがないなぁ。
 帝さんはどんな()け方をするんだろう、と興味を持ちつつ、ディーラー担当の先輩を見る。


「と……当店では、1枚、10円でチップをご購入(こうにゅう)できます……オススメは、まず10枚ご購入されることですが……いかがされますか……?」

「10枚、2人分」


 帝さんがズボンのポケットからさいふを取り出し、100円玉2枚をぽんとテーブルに置いたのを見て、「んぇ」と声がもれた。


「そんな、帝さん……!」

「追加がほしければ言え」

「い、いえっ、私、自分で買いますよ!?」

「さいふ、今持っているのか?」

「……はっ!!」


 そうだった!!
 私、教室からそのまま出てきたから、さいふは荷物のなかに置きっぱなしだ!
 わぁ~っ、うっかりしてた!


「い、今すぐ取りに――!」

「いい。金はくずしてある」


 がばっと席を立つと、帝さんに腕をつかまれて、イスの上にもどされる。
 うぅ……ミニカジノを出たら、絶対取りに行こう……。


「すみません……ありがとうございます……」

「あぁ」

「……そ、それでは、10枚ずつ、どうぞ……」


 落ちこみながら、ダンボール製のチップに変わった100円を受け取り、「Place(プレイス) your(ユア) bet(ベット)」の声で顔を上げた。


「先攻のプレイヤー、または後攻のバンカー……引き分けのタイのいずれかに、賭けてください」


 ミニバカラは、ディーラーの手でゲームのすべてが完結する、プレイヤーは賭けるだけのぼうかん型ゲーム。
 レイアウト上の、[PLAYER(プレイヤー)]と書かれた場所と、[BANKER(バンカー)]と書かれた場所に、ディーラーがそれぞれ2枚のトランプをくばる。
 そのトランプの合計、下一桁が9に近いほうの勝ちっていうのが基本のルールだ。

 決まったルールにしたがって、1枚だけカードが追加されることもあるけど、そのルールはプレイヤーが覚えていなくても大丈夫。
 ちょっとブラックジャックにも似ているけど、ミニバカラでは、2~9はそのままカードの数字どおり、Aは1、10と絵札は0として数える。
 ちなみに“ミニ”とついてるだけあって、このゲームは“バカラ”のプレイヤー人数を縮小(しゅくしょう)した版で、バカラとは細部がすこーしちがう。

 バカラは大金が動く、VIP(ビップ)のお客さま向けのゲームで、カジノゲームの王さまと呼ばれていたりするんだ。女王さまは、私が担当しているルーレット。


「うーん……」


 賭けの面においては、プレイヤー・バンカーのどちらに賭けて勝っても、払いもどしは賭け金と同額(どうがく)
 なんだけど、バンカーに賭けた場合は、手数料・コミッションが発生して、基本は5%差し引かれた上で、払いもどされる。
 このミニカジノでは、[バンカーで3回勝ったらチップを1枚差し引きます]とつくえに置いてあるボードに書いてあった。

 タイに賭けて勝ったら8倍の配当がもらえるけど、カジノの基本として、配当の倍率が高い賭け方はそれだけ勝ちにくかったりする。
 私はすこし考えて、損しにくそうなプレイヤー側にひとまず20円、チップを2枚賭けることにした。
 カジノなら半円型のテーブルに、丸い わく線が上下2個、等間隔(とうかんかく)で7つ横にならんでいて、上下の丸を区切るように横線が引かれているんだけど。

 このミニカジノでは、お客さんの前にそれぞれ紙が置かれていて……。
 上下に2個ある丸い わく線のなかに、それぞれ、上は[BANKER]、下は[PLAYER]って書かれている。


「……」


[PLAYER]と書かれた丸わくのなかにチップを置いてからとなりを見ると、帝さんはバンカーにチップを4枚賭けていた。
 帝さん、バンカーに賭けるんだ……それに、いきなり4枚も。


「の……No(ノー) more(モア) bet(ベット). ゲームを、開始します。チップを賭けるのを、やめてください……」


 きんちょう混じりの進行で、ゲームがスタートする。
 ディーラーの先輩がプレイヤーとバンカーにそれぞれ2枚ずつカードをくばった結果、プレイヤーは7とQで7点。
 バンカーは6と2で8点だった。

 この場合、プレイヤー・バンカーどちらもカードを追加することはなく、最初の2枚の点数で勝敗が決まる。


「プレイヤーが7点、バンカーが8点で、バンカーの勝利となります……勝ったお客さまには、賭け金と同額のチップを、お渡しします」

「わ、帝さん、出だしから好調ですね」

「……あぁ」


 私が賭けた2枚のチップは回収されて、帝さんには4枚のチップが払いもどされた。
 Gold(ゴールド) Night(ナイト)ではゲーム中に雑談をするような空気感はないけど、ここは文化祭のミニカジノ。
 気楽に楽しんでいいかなと思って、笑顔で話しかける。

 帝さんはちらりと私を見て、チップに視線を落としながら答えてくれた。


「Place your bet. 先攻のプレイヤー、または後攻のバンカー、引き分けのタイのいずれかに、賭けてください……」


 次の賭けが始まると、私は帝さんの手元に視線を向ける。
 今回帝さんは、バンカーに2枚のチップを賭けていた。
 ここで賭け金を減らすんだ……。

 そういえばルーレットであそんでるお客さまのなかにも、勝ったら賭け金を減らして、負けたら賭け金を増やしてる人、いたかも……!
 もしかしてそういう法則があるのかな、と思って、私は今回3枚のチップを賭けてみることにした。
 さっきバンカーが勝ったし、帝さんもまた賭けているから、バンカーに。


「No more bet. ゲームを開始します、チップを置くのを、やめてください」



ありがとうございます💕

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