Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第3章 予言が引き寄せた恋
11,文化祭めぐり
はずかしさのあまり顔をそむけて、ぱたぱたと片手で顔をあおぎ、ほおの熱を冷ます。
さっきのは絶対カウントされちゃってるけど、私のチェッカーって残りカウントいくつなんだろう……。
まだ反応したのは1回かな?
いや……
え、そうなるともう2回? あと1回帝さんにどきどきさせられたら私負ける!?
「ゆいちゃん、シフトいつ終わる~? 俺行きたいとこあるから、帝サマ案内してくれないか?」
「んぇ……あ、うぅんと、実はまだまだ――」
「すぐ終わります、どうぞご自由に連れて行ってください」
いつのまに。
振り向くと、茜は最大限にねこをかぶった愛想のいい笑顔を浮かべている。
「そう? わるいね~」
「いえ。どうぞごゆっくり」
「あ、茜……」
茜は接客スマイルを浮かべたまま、さっと離れていってしまった。
その姿を目で追っていれば、他のクラスメイトが茜に、ぐっと親指を立てているようすが見える。
「いい友だちだねぇ。
「え……あ、はい。1年のときから友だちなんですよ。さっきもあのお客さまから かばってくれたりして、かっこよくて」
友だちをほめられた うれしさで、笑みを浮かべて答えると、廉さんはうんうんとゆるく笑いながらうなずいた。
話題にあげてから、そういえば、とあのお客さまが置いていったお金の存在を思い出す。
「あのぉ、あのお客さまが置いていったお金、お代よりうんと多くて……帝さん、お代の残り、いりませんか?」
「……いらない。売り上げに入れておけ」
「んぇ……わ、わかりました……」
帝さんにそう言われたら、大人しく受け取るしかない。
ちらりと教室にいるクラスメイトを見ると、近くにいた女子がこくりとうなずいた。
どうやら会話が聞こえていたみたい。
それじゃああとは任せていいか、と、ホットケーキを食べて、コーヒーを飲む2人を見守る。
帝さんと廉さんが食事を終えたあとは、お見送りとその後の同行もかねて、一緒にレジへ向かった。
「お、お代はけっこうです!」
「そ~? じゃ、さっきの
「はい! ありがとうございました!!」
と、いう感じでお会計をスキップしたので、クラスメイト全員の「行ってらっしゃいませ、ご主人さま!」という声を背に、教室を出る。
今度は
「ゆいちゃん、ここの生徒指導室って2階だったよな?」
「はい。今日と明日は
「うんうん、ちょっと興味あるから行ってくるわ~。……じゃ、失礼します、帝サマ」
「あぁ」
廉さんも占いに興味があるんだなぁ、と思いながら手を振って廉さんと別れたあと、私はとなりに立つ帝さんを見上げる。
「帝さん、どこか行きたいところはありますか?」
「
無表情でそっけなく答えた帝さんを見て、うーんと考えこんだ。
せっかくなら帝さんに楽しんでもらえるところがいいよね。
「3年生の出し物は変わっていておもしろいですよ。
「そうか」
「あ、ミニカジノもあるんです! 晴琉くんと私でいろいろ教えたりしたんですよ。行ってみますか?」
「あぁ」
無事、帝さんの同意が得られたので、私は笑顔で帝さんを上の階に案内した。
行く先々で人々が言葉を失って固まるなか、何度か
「いらっしゃいま……」
「こんにちは、あそびに来ました」
「あ、結花ちゃ……」
入り口に立っていた先輩も、私の声を聞いて振り返った先輩も、教室のなかにいるお客さんたちも、帝さんを見るなりぴたっと固まる。
あはは、と苦笑いしつつ、私は帝さんを見て、先輩たちから聞いていたミニカジノの説明をした。
「ここではミニバカラにブラックジャック、
「……そうか」
帝さんはちらりと、カーテンを閉め切りつつ、きらびやかに かざりつけられた教室のなかを見回す。
文化祭の出し物としては、けっこう再現クオリティが高いと思うから、帝さんも感心してくれる……かな?
「ど……どのゲームが、ご希望でしょうか……?」
フリーズが解けたらしい、このクラスのリーダー的先輩がぎこちなく愛想笑いを浮かべて、帝さんに尋ねた。
帝さんは4つあるブースを見て、空いてるイスがあるミニバカラのテーブルを指名する。
「あのテーブル……ミニバカラ」
「か、かしこまりました。どうぞ、こちらへ」
案内するように先を歩く先輩の手と足が、同時に前に出ていた。
かなり きんちょうしているみたいだ。
私たちが近づくと、ミニバカラのテーブルについていたお客さん、特に空席のとなりに座っていたお客さんは、立ち上がってまで距離をとる。
気持ちはわかるけど、と苦笑いしつつ、右はしの席に座った帝さんのとなりに、私もメイド服のスカートをまとめて座った。
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