Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第3章 予言が引き寄せた恋
8,占 い師の予言
うながされるまま、
予言を解消したから、
「あなたが今なやんでいることや、知りたいことは なに?」
「うぅんと……私、とある人のお家に住まわせてもらってるんですけど、もしかしたら今後、その人の家から追い出されたりするかもしれなくて……」
「あら、大変ね。これから住む場所にこまるかもしれない、と思ってなやんでいるのね?」
「はい……それと、今週の土曜日に行きたいところがあって、そこにもちゃんと行けるのかなぁって」
「そう、土曜日に行きたいと思っているところがあるのね。わかったわ」
占い師さんはうなずいたあとに、すっと目を閉じる。
深呼吸をして、数秒後にまぶたを開けた占い師さんは、水晶玉に視線を向けながら、もっと遠くを見るような目をした。
集中し切っているのが伝わってくるからか、話していたときより
「――そう、あなたが……」
占い師さんは無表情に近い、真剣な顔から
私……? が、なんだろう?
きょとんとして考えていると、占い師さんは目を閉じて息を吐いてから、ほほえんで私を見る。
「大丈夫、あなたが住む場所にこまることはないわ。そして、あなたが行きたいと思えば、待ち人のもとへも行ける」
「ほ、ほんとですか」
「えぇ。あなたは思うままに行動すればいいわ。迷ったら、自分の心にしたがって」
自分の心にしたがって、思うままに……。
そうすれば、家にもいられるし、
もしかして私の運勢、いい感じ!?とよろこびをかみしめて にまにますると、占い師さんが「ふふっ」と笑った。
「ひとつだけ
「へ、最後の試練……?」
あるべき形におさまるための……って?
「私が伝えたことを忘れないで。大丈夫、縁は色
「え?」
“おたがいにとって、唯一無二の特別な相手”って……なんのこと?
「あのぉ、どういうことでしょうか……?」
「今、すべてを理解する必要はないわ。ときがくれば、おのずと意味がわかるようになるから。あなたはすごい女の子ってことよ、
つん、と占い師さんに人差し指で鼻の頭をつつかれて、「んぇ」と声が出た。急にフレンドリーだ。
よくわからないけど、占い師さんも今はわからなくて大丈夫って言ってるから……思うままに行動すればいい、ってことだけ意識しておけばいっか。
でも……私、占い師さんに名前言ったっけ?
うーん?と首をかしげながら、私は占い師さんにお礼を
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「お帰りなさいませ、ご主人さま」
「お待たせいたしました。こちら、ウーロン茶でございます」
いよいよ文化祭が始まって、在校生から、
がやがやと
「メイドさん」
「はぁい。ご主人さま、お飲み物やお食事はいかがされますか?」
手を挙げて呼ばれ、クラスメイトが無事に仕上げてくれたメイド服を着た私は、お客さまが待つ席に近づく。
注文票を手に、仕事で身につけた接客スマイルを向けると、お客さまがメニューを見ながら、あれやこれと注文を告げた。
「それから、ゼリーを」
「かしこまりました。ただいまご用意いたしますので、少々お待ちください」
ぺこりと
在庫管理担当のクラスメイトに注文を伝えて商品を受け取ったら、ご注文されたお客さまのもとへ、つくえのあいだをぬってもどった。
「お待たせいたしました、ご主人さま。こちら――」
「おい、俺の分はいつ来るんだ!」
「もうしわけありません、ただいま!」
他のお客さまの
席を離れると、おなじくホール担当の
「茜、やっぱり
「ははっ、それ何回目? んなこと言ってるひまないでしょーよ」
メイド服か執事服かは希望制だったのだけど、茜が希望した執事服は茜によく似合っている。
今日の朝、初めて見たときも ほめちぎったけど、不意に見るとまた ほめたくなって、こっそり言いに来てしまった。
「おい、そこのぼさぼさ髪の女!」
「……ねぇ茜、あれってもしかして私のことかな」
「まぁ、うちのクラスで一番髪がぼさぼさしてるように見えるのは結花だわな」
「やっぱりぃ……?」
ちらりと振り返ると、さっきも大きな声を出していた男性のお客さまは、イスにどかっと座ったまま私を見ている。
「おまえだよ、ブス! なにひそひそ話してんだ!」
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