Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第2章 ドロップハートの攻防戦
10,結花 を家に住ませた理由
そういえば……私も
そう思いついて、私は帝さんに顔を向け、口を開いた。
「帝さん、どうして私を家に住まわせたのか、もう一度聞いてもいいですか? 前は“気まぐれだ”って言ってましたけど、けほっ……」
んん、とすこしのどを ととのえてから、無表情の帝さんに視線をもどして、言葉を続ける。
「やさしさからだとしても、帝さんは なんの計算もなしに、
帝さんがやさしいのは知ってる。
でも、支配人として はたらいてるところをそばで見ていると、損得
ただのやさしさで4年も私を家に住まわせて、自分のカジノで はたらかせて、なんて、帝さんから感じる印象とは ちょっとちがう気がするんだ。
「私に なにか求められていることがあるなら、帝さんへの
勝負の再挑戦を、ドロップハート限定で認めてくれたことも。
勝者は、敗者になんでもひとつ言うことを聞かせられる、っていうドロップハートのルールで、私に なにかさせたいことがあるのかなって。
帝さん側のメリットを考えて、思いついた可能性なんだけど。
頭が痛くて、ぼーっと帝さんを見つめると、帝さんも無言で私を見つめ返した。
すこし遅れて、あ、聞いちゃいけないこと聞いちゃったかな、と気づいて「ごめんなさい」と口にする。
「またぶしつけな質問を……気をつけてはいるんですけど、聞いちゃだめなラインっていうのがわからなくて……もう聞きませんから」
帝さん、怒らないでくれたらいいなぁ……。
帝さんにきらわれるのは、ちょっとやだ。
そのためにも、なにか別の話題を……と考え始めたところで、帝さんが「いや」と答えた。
「答えるかどうかは俺が決める。
「え……」
“好きに聞けばいい”なんて言われたのは初めてで、びっくりしながら帝さんの顔を見つめる。
帝さんは視線をそらして、気だるげに口を開いた。
「5年前に、
「んぇ……っ!?」
え、占い師? 予言? 帝さんが今年死んじゃう!?
な、な、な、なにそれ……!!
「結花は、俺の命を救う存在らしい」
帝さんが私に視線をもどして、そう続ける。
「わ……私が、帝さんの命を……??」
そう言われても、私、ただの一般人なんだけど……??
帝さんを助けられるスーパー技能とか、持ってないよ?
は、もしや、私自身が気づいてない
……いやぁ、ないよねぇ……。
「んんん……まったくもって帝さんを助けられる自信がありませんけど……でも、私にできることがあるなら、がんばってその予言、そししてみせます!」
「……」
ぐっ、とこぶしをにぎって力強く
思ったよりも大きな期待をされてたけど……でも、帝さんから あたえてもらったものを考えたら、つり合いがとれているのかもしれない。
帝さんの命を救う……。
帝さんにどんなピンチが訪れて、私にどんな役割が求められるのかわからないけど……帝さんが死んじゃうなんて、私もいやだし。
「まずは、その
帝さんは私に声をかけると、熱をたしかめるように、手の甲で私のほおに触れる。
どきっとすると、その手はすぐに離れて、帝さんもソファーから立ち上がった。
帝さん……行っちゃうのかな?
1人になるの、さみしいなぁ……。
でも、帝さんを引き止めるわけにもいかないし……。
「定期的にようすを見に来させる。なにかあれば使用人に言え」
「はい……ありがとうございます、帝さん」
お礼を言うと、帝さんはうなずいて、
さみしい気持ちをがまんするように目を閉じると、時間が経たないうちに、すぅ、と意識が
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よく部屋に来てお世話してくれた使用人さんと、お昼と夕方にようすを見に来てくれた帝さん。
そして、日曜日と月曜日の2日間ゆっくり休んだかいあって、火曜日の今日には回復して、仕事に来ることができた。
からん、と白い球が赤いマスに落ちて、ゆるやかな回転になったホイールが遅れて止まる。
それから、赤の34をふくむ場所に賭けていたお客さまに配当金を払いもどす。
ルーレットから球を回収して新しいゲームを始めようとすると、ディーラーの制服を着た男性が、
んん?と疑問に思いつつも、両手を突き出して手のひらを合わせるいつもの動作をして、お客さまに
テーブルを離れようとすると、すれちがいざま、交替に来た人がひそ、と耳打ちしてきた。
「支配人がお呼びです」
帝さんが?
なんだろう、と思いつつ、「わかりました」と小声で答えて、私はカジノフロアを出た。
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