Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第2章 ドロップハートの攻防戦
4,茜 の助言
《うわぁ……え、これここ進まなきゃいけないの? 真っ暗だよ? いったんもどって別の道探そ? ね?》
左耳にさしたイヤホンから、ホラーゲームで遊んでいる
画面を直視するのがこわいのもあるけど、今日はゲームに集中するという気分じゃなくて、がやがやと話し声が聞こえる教室のなかで、自分の席に寝そべった。
「はぁ……」
「推しの動画見てるわりに、元気ないじゃん。どうしたの?」
「あかね~。どうしたら
「は?」
休み時間で主が不在の前の席を乗っ取った
それとは対照的に半目で見られて、しんらつな反応をする友だちに すこしほおをふくらませた。
《うわぁぁぁっ! びっくりした! 急に出てくるのやめよう!?》
イヤホンから聞こえる博ツキくんのさけび声にちょっと元気が湧いて、体を起こす。
「あのね、私、
「うん。で、負けたから今日も学校来てんでしょ?」
「そうなんだけど、そうじゃなくて……」
「意味わからん」
私は茜に、帝さんのやさしさで再挑戦のチャンスをもらえたけど、その勝負の内容が心を落とし合う
今のところ、職場の人からアドバイスをもらって、帝さんの意表をつく変わったことをしてるんだけど、というところまで話して、肩を落とす。
「うちの専属の歌姫さんがさ、帝さんに、こう……スキンシップとかしてて、美人なお姉さんなのに、帝さん無反応で」
「いやぁ、なんか職場の人いわく、歌姫さんは帝さんのことが好きなわけじゃなくて、利用しようとしてる?とかで」
「あ~、野心強いんだ。ま、
なにかを理解している茜は、「たしか歌姫も21なんだっけ? やりすぎて消されないといいけど」と目を閉じて笑った。
私としては、年齢が近そうだとは思ってたけど帝さんとおない年なんだ、ということにびっくりする。
「で、結花はライバルに
「お、臆してるわけじゃないよ? でも、あんなに美人な人がアプローチしても無反応なんだから、私なんかがなにしたって……」
「ほら、臆してんじゃん。ま、そこらの女なら むりむりって笑い飛ばすとこだけど……結花はなんか特別だもんねぇ」
茜は ほおづえをつきながら、私の顔をまじまじと見てきた。
特別……な、わけじゃないと思うけど。
私って
「……茜、どうしたらいいと思う?」
「ん~。そうなー、まずもって結花は年下なわけじゃん? あたしらからは年上って恋愛対象として見れるけど、年上側からは なかなかそうは いかないわけよ」
「ははあ」
「年が離れてるぶんだけ、恋愛対象としては見にくい。だから、こっちが女って意識させる必要があるんじゃね?」
「女子として意識させる?」
「そ。とりあえず結花さ」
そこで、茜は ほおづえをついたまま、目を細めて笑う。
「帝さまと体の関係持ってみたら?」
「かっ……!?」
ぶわっと顔が熱くなって、おどろきのあまり、けほっけほっとむせた。
「な、なんてこと言うの!」
「いかにもピュアですって顔した結花が押したおしてくるなんて予想外も予想外だから、きっと意表つけるよ」
「意表……はっ、じゃなくて! み、み、帝さんを押したおすなんて、そんなことできるわけないじゃんっ!」
意表をつけると聞いて一瞬考えちゃったけど、いくらなんでもそれはむり!
そりゃあ、早い子は数年前にもう……とか聞くけど、私がとか絶対にむりだよ!
「インパクトもあるし、手っ取り早く女として見てもらえるし、関係も進むし、いいことづくしじゃん?」
「そ、それは
「結花もここらで大人になっときなよ?」
「な、なにその言い方! いいもん! 私子どものままでいいもん!」
「は~、これだから うぶちゃんは。長年黒街に住んでて、よくそこまでピュアに育てたもんだ」
ため息をつく茜をよそに、私は ぱたぱたと手で顔をあおいで熱を冷ます努力をした。
茜の提案は絶対に受け入れられないけど、女子として……恋愛対象として見てもらう努力は、たしかに したほうがいいのかもしれない。
でも……茜の案は なしとして、恋愛対象として見てもらえるアプローチってなんだろう?
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