Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第2章 ドロップハートの攻防戦
1,ドロップハートの始まり
「――それで、この手首につけてるチェッカーが脈拍と体温を感知しているらしく」
「へぇ。恋に落ちたことは、身体的な変化で判定するんだ」
「はい。2つのチェッカーが半径1.5m以内にあるときの脈拍と体温の
時計のように手首にフィットしているこの機械がなければ、私は今でも
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―――
「勝者は敗者になんでもひとつ言うことを聞かせられる。期間は自由に設定できるが……今回は、11月8日までだ」
「11月8日……」
それって、博ツキくんのライブがある日だ……!
でも……1ヶ月弱で帝さんの心を落とすって、この世にそんなことできる人がいるの……?
帝さんが恋をしてるところ……うん、ぜんぜん想像できない。
「あのぉ……ちなみに帝さん、今までお付き合いした人って……?」
倉庫のなかに入って、奥のほうにしまわれていたチェッカーを取り出し、私に渡した帝さんをおずおずと見つめる。
帝さんは感情といったものに縁がなそうな無表情で、あっさりと答えた。
「いない」
「あぁ……」
ですよね。
もし帝さんと付き合えた人がいるなら、どうやって交際にまで
帝さんに片想いするならまだしも、帝さんから愛してもらえる人なんて想像もつかない。
「外に出るのをあきらめるなら、ドロップハートをやらなくてもいい。だが、例外として勝負の再挑戦を認めるのは、ドロップハートだけだ」
帝さんを落とせる
帝さんの心を落とすなんてどう考えても“無理ゲー”というやつだけど、まだライブに行ける可能性があるとしたらこれだけだし……!
「うぅ……やります、やらせてください……!」
かっとうして うなりながら、私は、ぎゅっと目を閉じてその言葉をしぼり出した。
でも……と、眉を下げて帝さんを見る。
「だけど、帝さんはいいんですか……? このゲームをやれば恋愛関係になる可能性もあるということで……その、私なんかを相手に」
どう考えても、帝さんと私じゃ落差がはげしいと思うんだ。
私にとって帝さんは くもの上の人だけど、帝さんにとって私って、
心配して見つめると、帝さんは私と目を合わせたまま、言った。
「俺を落とせるなら、
「え」
どき、と心臓がはねる。
私って、帝さんの恋愛対象になりうるの!?
それって、ちょっと、あの……っ。
じわ、とほおが熱を持ち始めたのを感じて、あわててチェッカーを持ったまま両手でほおをはさんだ。
わ、私が落とされたらだめなんだ。心を強く持とう!
今の発言は、ちょっと脳内消去する方向で! 深呼吸、深呼吸……。
「すー……はー……私っ、がんばって帝さんを落とします! 私が勝ったら、外に出る許可をくださいね!」
「あぁ」
―――
――――――
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なんて、昨日は
帝さんを落とすって……どんな魔法を使えば可能になるの?
「はぁ……晴琉くん、どうすれば帝さんを落とせるんでしょうか。私、モテテクなんて持ってませんよ」
「支配人を落とす方法かぁ……うーん、ふつうなら、相手をほめたり、相手の趣味に興味を持って笑顔で話を聞いたりとか」
「おぉ……」
「とにかく好意的な姿を見せて、相手が
さすが、
ぽんとモテテクが出てくるあたり、
年が離れていたり、帝さん
今も晴琉くん以外の人からは一定の距離を置かれているスタッフルームのなかで、感心して晴琉くんを見つめていると、聞き覚えのある声が入ってきた。
「帝サマにそのふつうは当てはまらねぇなぁ。おべっかは聞きあきたって顔だし、趣味もねぇし」
「
「おはようございます、
振り返ると、今日も気だるげな廉さんがへらりと笑って近づいてくる。
「お~。今日も仕事でだるいな」なんてあいさつのように言っているけど、廉さんは仕事をきっちりやる人だ。
そして、帝さんと仲がいいから、帝さんとおなじように おそれられている人でもある。
セキュリティ担当だから、
「帝サマを落とすなら、やっぱ変わったことをして意表をつくのがいいんじゃないか?」
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