Gold(ゴールド) Night(ナイト) ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―

第1章 黒街(くろまち)から出るための勝負

11,勝負の行方(ゆくえ)

約2,000字(読了まで約6分)


 現時点での合計は14……。
 晴琉(はる)くんのアップカードは10だから、手持ちが15以下ならヒットという定石(じょうせき)に当てはまる。
 私はテーブルをトントンとたたいて、追加のカードをもらった。

 3枚目はA、11と数えれば25でバストだから、1と数えるしかない。
 そうすると合計は15だから、定石にしたがうならもう一度ヒットだ。


「ステイ」

「ステイ」


 他のお客さまが宣言(せんげん)したあと、テーブルをトントンとたたいて もう1枚のカードをもらう。
 4枚目に来たのは6。
 これで合計は21になったから、晴琉くんも21にならないかぎり勝ち……!

 期待をこめて、全員がステイの意志表示をしたあと、晴琉くんがダウンカードを返すようすに注目すると、あらわになったのはKだった。
 つまり、ハウスの合計は20。私の初勝利!
 にじみ出る笑みをこらえきれず にやついてしまったけど、今は仕事中じゃないからいいか、と にまにましたまま4戦目が始まるのを待つ。

 この調子で連勝しちゃえば、(はく)ツキくんに会いに行ける~……!


No(ノー) more(モア) bet(ベット)


 ふたたび、1枚ずつ くばられたカード。
 今回は、5と6が私の手となる。現時点での合計は11。
 10が来ればほぼ勝ちだし、Aが来ても1として数えればいいから、迷わずヒットし、3枚目のカード、9をもらった。

 これで合計は20。
 晴琉くんのアップカードは7だ。


「ステイ」

「ステイ」


 前に出した手を左右に振り、私もステイの意志表示をして、晴琉くんのダウンカードが返されるようすを見守る。
 表になったのは、3。
 合計で10だから、17以上になるまでカードを引くというルールにのっとって、晴琉くんがもう1枚カードを追加する。

 3枚目は9で、合計は19……!
 私の連勝だ、やった! あと1回勝てばライブに行ける!
 私にもツキが回ってきたかも~!

 ゆるむ顔をそのままに、るんるん気分で5戦目が始まるのを待った。
 他のお客さまがチップを()けたあと、手元にくばられたのは7と10。
 この時点で合計は17だから、ハウスのアップカードがなんであってもステイで確定。


「ヒット」

「ヒット」

「ステイ」


 ヒットが多く聞こえる声に混じって、伏せた手を左右に振り、ステイの意思表示をする。
 他のお客さまの行動処理が終わるまで、晴琉くんのアップカードである3を見つめて待っていると、ダウンカードが返される瞬間(しゅんかん)がやってきた。
 2枚目のカードは10。合計13で、晴琉くんが追加のカードを引く。

 3枚目のカードは……6。
 合計で19だから、わ、私の負けだ……。
 1引き分け、2勝2敗……!?

 つ、次の勝負にライブがかかってる……!
 私はごくりとつばを飲んで、6戦目、最初にくばられたカードを凝視(ぎょうし)した。


 1枚目は、3……!
 そわそわ、きんちょうしながらもう1枚のカードがくばられるのを待って、トランプを持った晴琉くんの手が私のほうへ伸ばされるようすを見つめる。
 さっ、とテーブルの上をすべって手元に来たのは、J。

 これで、合計は13……。
 ちらりとうかがった晴琉くんのアップカードは9だった。
 ハウスのアップカードが9のときは、自分の手持ちが16以下ならヒットするのが定石。


「ヒット」

「ステイ」

「ダブルダウン」


 そっと、人差し指でテーブルを2回たたくと、3枚目のカードがくばられる。
 新しく来たのは3。合計で16だから、もう一度ヒット……!


「ステイ」

「ステイ」

「ヒット」


 他のお客さまの宣言が終わったあと、もう一度テーブルをたたいて、追加のカードをもらった。
 4枚目は……10!?
 合計26で、バストだ……!!

 がんっ、とショックを受けて放心する。
 他のお客さまとのゲームが進んで、晴琉くんがダウンカードを返し、追加のカードを引くようすを、ぼーっとながめた。
 テーブル全体でゲームが一区切りつくと、とん、と左肩をたたかれる。(みかど)さんからの、終わりの合図だ。

 私は3、J、3、10、とならんだ4枚のカードを見つめながら、ふらふらと立ち上がり、出口に向かって歩き出した帝さんのうしろに続く。
 周りのお客さまが「負けた」「負けたらしい」とひそひそ私のことを話す声を聞いて、負けちゃった、と目がうるんだ。


 すぐに売り切れちゃうっていう うわさのチケットは買えたのに、黒街(くろまち)から出れない……。
 ライブを観に行けないなんて。
 うつむいたまま歩いて、いくつかの扉を通りすぎたあと、私はすがるように顔を上げて、帝さんのスーツのすそをつかんだ。


「……」


 振り向いた帝さんが、いつもどおりの冷たい瞳を私に向ける。


「……どうしても、だめですか。1日――」

「――負けただろ」


 1日2日でもいいんです、とお願いしたかったのに、()だるげな声で一蹴(いっしゅう)されて、つん、と鼻の奥が痛くなった。


ありがとうございます💕

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