Gold Night ―退屈をもてあました男は予言の乙女を欲する―
第1章 黒街 から出るための勝負
10,ブラックジャック
私の手元に届いた2枚目のカードは2。
このゲームでは、トランプの数字を使って、2枚、または任意で追加した3枚目、4枚目のカードの合計を
合計が21になれば、相手が同点のときを
だけど、合計が22以上になればその時点でバスト、敗北が決定。
21未満の場合は、ハウスとプレイヤーのどちらがより21に近いかを競って、21に近い手を持つほうの勝利となる。
プレイヤーが何人いても、プレイヤー対ハウスの1対1の勝負であるという事実は変わらない。
「……」
さて、今回の私の手は8と2だから、現時点での合計は10。
21とくらべれば半分以下の数字だから、絶対に追加のカードがほしいところ。
それに、最大数を引いてもバストにはならないし……。
ちら、と
ハウスの手はプレイヤーの行動がすべて終わるまで、2枚目のカードが伏せられたまま。最後に2枚目のカードを表に返して、17以上の数字になるまで追加のカードを引くのがハウスに課せられたルール。
ブラックジャックにおいて、いわゆる絵札と呼ばれる、11の
じゃあ、1枚のカードの最大数は10なのかと言えば、これまた例外のカードがあって。
1の
現状10同士の私と晴琉くんは、どちらも次のカードで12~21になる可能性がある。
「ステイ」
「ダブルダウン」
「ヒット」
「ヒット」
右はしのお客さまから順番に
私はヒット、カードの追加を希望するという意味で、テーブルを人差し指でトントンと2回たたく。
さっ、と手元にくばられた3枚目のカードはK。
これで私の合計は20になった。晴琉くんの手が20以上にならなければ勝てるけど……。
「ステイ」
「ヒット」
「ステイ」
「ステイ」
2巡目、ステイ、追加のカードはいらないという宣言が増えるなか、私もテーブルに伏せるように出した手を左右に振り、ステイの意志表示をする。
3巡目、全員がステイすると、晴琉くんが裏を向いたダウンカードを表に返した。
そのカードはK、私とおなじで合計は20。17を超えているので追加のカードは引かず、1戦目はプッシュ、引き分けが確定した。
無表情でテーブルに視線を落としていた帝さんは、私の視線に気づくと目を合わせた。
「……」
「……」
この勝負に負けたらライブに行けない……ものすごくプレッシャーがあるけど、
私はへら、と帝さんに愛想笑いを向けてから、テーブルに視線をもどして2戦目に いどんだ。
他のお客さまがチップを賭け終わってからふたたび くばられたカードは、Aと2。この時点で私の合計は13、晴琉くんの表を向いたアップカードはK。
手持ちにAがあって、1とも11とも数えられる場合は、18以上になるまでヒットするのが
私はテーブルをトントンとたたいて追加のカード、4をもらった。
これで合計は17。もう一枚カードを要求すると、追加で来たのは9だった。
Aを11と数えれば26でバストになるけど、1として数えれば合計は16。
この時点で、Aを1とも11とも数えられる場合、18以上になるまでヒットする、という定石の条件から外れるから、ここからは通常の定石にしたがう。
ハウスのアップカードが10のときは、自分の手が15以下の場合はヒット、16以上のときはステイ、だから……。
下に向けた手のひらを左右に振って、他のお客さまの行動が終わるまで待つと、晴琉くんのダウンカードが返された。
結果的には合計が下がっちゃったけど……どうなるかな?
晴琉くんの2枚目は8。合計は18だから、ヒットしていなくても負けだ。
1引き分け1敗……あ~、出だしからびみょう!
で、でも、ここから取り返せる可能性も ぜんぜんあるはず!
私はひざの上で両手をにぎって、3戦目のカードがくばられるのを待った。
「
他のお客さまへ、チップを賭ける時間の終了を
3戦目、私の手元に来たのは、5と9だった。
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