男装して騎士団に入ったら、2人の天才に愛されて困ってるんですが。
8,対スイセン騎士団戦
次の試合までの空き時間中、アリスターはしばらく不在にすると言って控室を出ていった。
アリスターが預かると言った、スイセン騎士団にハメられた件を
そんなわけで、アリスターが不在の間に、4戦目の、アケビ騎士団との試合が始まった。
今までとは違う速さで連敗していくみんなにならって、私もまともに剣を
相手の騎士は不満そうな顔だったけれど、私が必要なのはアケビ騎士団への勝利じゃない。
「3人がかりならなんとかなるものさ。1人目には僕がトドメを刺そう。そして2人目の体力を削り……」
「俺が、必ず2人目に勝ってみせる。待っててくれ、ショーン」
「……あぁ。みんな、頼んだ」
アリスターが不在のまま、みんなで作戦会議をすると、まもなく最終戦が始まった。
今までより試合時間が長引いているのは、みんながスイセン騎士団を相手に食らいついてくれているおかげだ。
もしかしたら、みんなも入団して早々、スイセン騎士団に力の差を見せつけられた、あのときのリベンジをしようと思っているのかもしれない。
通路に出て、いつでも交代できるように待機した私は、胸に手をあてて深呼吸をした。
体に疲れは感じない。
1人目、2人目に時間をかけなければ、4人を相手にしても戦える、勝てる。
「勝者、マリーゴールド騎士団、トム・カーライル!」
「よっしゃあ!」
2人目に勝利したことを知らせる声を聞いて、笑みを浮かべた私は、力を使い
「勝者、スイセン騎士団――!」
審判の声を聞いて、こちらに戻ってくるトムの顔は少し悔しげだったけれど、私はにこりと笑って、すれ違いざまに肩をたたく。
「ありがとう。お疲れ」
「あとは頑張れ、ショーン……!」
残っているのは、新人の騎士が3人と、3年目以内の大将が1人。
私は3人目の騎士の前に立って、白いサヤから剣を引き抜いた。
「始め!」
審判の声を聞くと同時に、私は一歩踏み出して剣を全力で振り下ろす。
相手が反応できていないのを見て、剣が相手の体に触れる前に寸止めした。
一拍遅れて「勝者、マリーゴールド騎士団、ショーン・ローズ!」の宣言を聞くと、剣を下ろして3人目が交代するのを待つ。
「な……く、そっ」
相手が悔しげな顔で去っていくのを見て、私はちらりと自分の腕を見た。
むしろ、寸止めに筋力を使いすぎて、腕が重くなってくるかもしれない。
最初から寸止めする気持ちで、初撃を打ち込んだほうがよさそうかな。
相手はまったく、私のスピードに反応できてなかったし。
4人目が前に出てくると、審判は両者の構えを確認して「始め!」と声をあげた。
その瞬間、3人目のときと同様に剣を振り下ろして、相手の体に触れる前にピタッと止める。
「勝者、マリーゴールド騎士団、ショーン・ローズ!」
「くっ……ひきょうだ!」
「自分はただ、剣を振っただけです」
「そうです、彼は違反行為をしていません。控室にお戻りください」
審判にも反論されて、4人目は私をにらみつけながら背を向けた。
次に出てきた5人目の新人騎士は、警戒した
この様子だと、最初から振り下ろし読みでガードされるかもしれない。
それなら……。
「始め!」
開始の合図を聞いた瞬間、私は剣を水平に下ろして、相手の腹部へ突きをくり出した。
思った通り、相手の剣が振り下ろしを警戒したガードに移行したのを見て、寸止めする。
「勝者、マリーゴールド騎士団、ショーン・ローズ!」
私は剣を引いて、ふぅと息を吐いた。
全力のスピードを出して、寸止めして、をくり返しているから、少し体が疲れたけど、あと1人ならまだ戦える。
大将クラスにこの速攻勝負が通用するとは思っていないけど。
油断せずに最後の1人が出てくる様子を見つめると、私は剣を構えた。
「今までのように、とちゅうで負けると思っていたんだがな。俺にも例のペテンをしかけるつもりならやめておけ」
「おかげさまでノアが不在でして。自分が全力を出すしかないんですよ」
相手が剣を構えると、「始め!」と審判が試合の始まりを宣言する。
先に動いたのは相手のほうだった。
私がやったように、初速に全振りした振り下ろし攻撃をしかけられて、大人しく受け流しの構えをとる。
「はっ」
鼻で笑った相手にイラッとしたわけではないけれど、すねを蹴ってやると相手の顔がゆがんだ。
相手の剣が離れてから、自分の剣の位置を正面に戻すように、水平にして剣を振り抜くと、わき腹に触れる前に寸止め……。
するはずが、相手がうしろに下がって攻撃をよける。
空中で止まった剣を弾くように、相手に剣をぶつけられて少し体勢を崩すと、そのすきを
受け流しは間に合わない、から……。
私は半歩下がって攻撃を
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