男装して騎士団に入ったら、2人の天才に愛されて困ってるんですが。
13,2人の好意に挟まれて
1日目で魔物を
その道中、夜を迎えて、近くの町でいくつかの宿をとった私たちは、それぞれの宿で休むことになったのだけれど……。
「ショーンも少し飲むか?」
「ノア、ショーンにエールはまだ早い。それよりも、このソテーをあげよう。美味しいぞ」
「はあ……どうも……」
なんで私は、ノアとアリスターに挟まれて夕食をとっているんだろう。
右には、プロポーズをしてきた男性が。
左には、体を温めるためとはいえ、一晩抱き
どっちを向いても気まずいことこの上ない……。
「これ、好きだったろう」
ひょいと、私のお皿に料理を移してくるノアはいつも通り。
「僕のも食べるか?」
にこにこと、さらに盛り付けを増やすアリスターが、新しく加わった悩みの種だ。
「……あの、そんなに与えられても食べ切れません」
「アリスター団長、ショーンがこう言っているので料理を与えないでください」
「1人であげてばかりだと、ノアの食べる分がなくなるだろう?」
なぜそこで言い合いが発生するのか。
分からない、そもそもどうして私にかまうわけ?
2人とも勝手に食べればいいのに……。
ため息をこらえながら料理を口に運ぶと、ノアとアリスターが私を挟んで見つめ合った。
「……ショーンにかまいすぎではありませんか、アリスター団長。1人の部下をひいきすれば、周りが不満を抱くのでは?」
「ここには僕たちしかいない。それなら、好きなように振る舞ってもいいだろう?」
そう、各宿の空室状況が入り交じった結果、3部屋しかとれなかったこの宿に、私たち3人が泊まることになってしまったのだ。
気まずい顔ぶれになったのは運の尽きとしか言いようがない。
まぁ、肩ひじ張らなくていい2人だと思えば、逆に幸運なのかもしれないけれど。
「ずいぶんと態度が変わったのですね。山で過ごした夜、なにがあったのですか?」
「いや、なにも……」
「ショーンのことをより深く知るいい機会になった。そして、自分のことも」
思わずアリスターを見ると、目を伏せていた。
まぁ、抱き締めていたことはさすがに言わないよね……?
体に走った緊張が抜けて、食事を再開しようとすると、まぶたを持ち上げたアリスターと目が合って、
思わずドキッとした私を正気に戻したのは、けん制するようなノアの声だった。
「ショーンを理解しているのも、甘やかせるのも俺です」
「……ノア先輩、あなたは」
「
右から回された腕が私の肩を抱く。
もしかして今、アリスターに私が好きだって言ってる……!?
どうして!? それ言う必要あった!?
「……ショーンの気持ちは?」
アリスターに澄んだ瞳でじっと見つめられて、私は視線をそらした。
「いえ、あの、考えたこともなくて……まだ
「……そうか。それなら、ノア先輩と僕は対等な関係ということだな」
ノアとアリスターが対等な関係?
どんな点で? 剣の腕?
「……俺が見つけた女性です」
「出会いは誰にでも等しいだろう? その後、どれだけ心を通わせられるかが大事なポイントではないか?」
「それなら、負ける気がしませんね」
「僕だって、負ける気はない。付き合いの長さがすべてではないと証明しよう」
私の左手を握ったアリスターの視線が、ノアから私に移ってきて、燃える火のような熱気が伝わってきた。
……イヤな予感がする。
アリスターが次に口にする言葉を聞いたら、世界が一変してしまうような、イヤな予感が。
「シャノンのことが好きな男は、ノア先輩1人じゃない」
「え……」
アリスターの視線は動かない。
私も固まったまま、ピクリとも動けなかった。
もしかして私、遠回しに好きだと言われた?
ノアだけじゃなく、アリスターにまで?
え、本気?
いやいや、きっと違う意図があるはず。
「え、えっと……なにを言っているのか、よく……」
ぐいっと、右に抱き寄せられて、ノアが耳の横で声を発した。
「シャノンが好きだと言っている」
ガチリと体が固まると、今度は腰に手を回されて、左に抱き寄せられる。
「僕もきみが好きだ、シャノン」
ささやかれた耳から全身へ熱が伝わるように、カッと体が熱くなった。
ノアとアリスターが、私に好きと言っている??
うそでしょ? 私を好きになる変わり者がこの世に2人もいるの?
私はただ
「い、一旦、食事をさせてください……っ」
2人の男性に
右側の美しい微笑みも、左側のキラキラした笑顔も視界に映さない努力をしながら、私は夕食に集中して、現実逃避をすることにしたのだった。
こんな事態は想定外だよ!
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