男装して騎士団に入ったら、2人の天才に愛されて困ってるんですが。
2,一難去ってまた一難
Side:シャノン・ローズ
一瞬で眠気が吹き飛んだ……。
この状況、どうしよう。
「しょ、ショーン、お、お前、お、お、おんっ……!」
落ち着くの、私。
なんとかなる、なんとかする、じゃないと終わり!
「……おん、なに? 悪いけど、1人にしてくれないか。すぐ出るから」
「ショーンくん? 背中に傷なんて、ないみたいだけれど……」
「言い間違えたんだ、怪我をしたのは胸。手当も自分でできるから、心配しなくていい」
「む、胸って、胸、あ、あった……っ!」
「と、に、か、く。今すぐ、出ていってくれ」
気づいたのはトム1人だけみたいだし、それならなんとか言いくるめられる。……はず、多分。
だからとにかく3人で一緒に出ていって、包帯巻いて体勢立て直すから!
包帯で隠れてはいるけれど、膨らみで女とバレてしまう胸を両腕で隠して、背中を向けていると、肩にぽんと手が置かれた。
悲鳴が出そうになった口を、とっさに片手で押さえる。
「……ショーン、大丈夫、……」
「だ、大丈夫です。なので今は1人にしてください」
「……」
肩に乗った手が離れて、ほっとした。
「まぁ、ショーンくんがそこまで言うなら」
「お、おん、おん、おん……!」
「……」
正常なネイサンと、動揺したトム、無言のニック先輩が出ていった気配を感じとると、私はすぐに包帯を巻き直した。
それはもう、いつも以上にきつく。
そしてすぐに服を着ると、深呼吸をして心を落ち着けてから、風呂場を出た。
「……あれ、誰もいないな」
てっきりあの3人が待ってると思ったのに。
まぁ、いないなら好都合。
今のうちに部屋へ戻って、夢でも見たんじゃないの、と明日ごまかしてしまおう。
私はそう決めて、足早に自分の部屋を目指した。
頭はすっかりさえたけれど、ベッドに横になると、飛んでいった眠気が戻ってきて、うつらうつらとしてくる。
睡魔の前では、全部どうでもいいなぁ……。
すべて明日の私に投げ渡そう……。
そうやって、眠りに落ちる直前までいったとき、コンコンと扉がノックされた。
眠すぎるから無視しようと思ったのだけれど、「ショーン、いるか」と聞こえたのがアリスター団長の声だったので、渋々起き上がる。
「はい……なんですか……?」
あくびをかみ殺しながら扉を開けると、思いっきり寝る前というラフな格好をしたアリスター団長が、物言いたげな顔で立っていた。
その奥には、トム、ネイサン、ニック先輩の3人が控えていて、目が覚めていく。
まさかアリスター団長に、即刻チクりに行くとは……!
「その……トムとニックから、気になる話を聞いてな。ここではなんだから、中に入ってもいいか?」
“トムとニック”って……ニック先輩も気づいたの!?
まずいまずい、2人も証言者がいたらさすがにごまかしきれない……!
どうする私、どうやって逃げ切る……!?
「えっと……明日にはできませんか?」
「2人から聞いた話が本当なら、緊急事態なんだ」
「ハハハ、マサカ……心当たりがないので、明日でも大丈夫です」
「だが、その……」
アリスター団長、しつこい……!
強引にでも閉め出す?
ここは時間稼ぎをして、対抗策を練らないといけないし……!
いっそのこと、と
「……こんな時間に、ショーンの部屋の前でなにを?」
「ノア……ちょうどいい、ノアも来てくれないか」
ノア登場!?
よかった、1人より2人……!
「……分かりました、アリスター団長。どうぞ中へ」
私は平静を装って、扉を大きく開ける。
アリスター団長と、トム、ネイサン、ニック先輩に、ノアの5人を迎え入れると、私はノアのそばに立った。
狭い部屋にぎゅうぎゅう詰めになりながら、アリスター団長が私に向き直る。
緊張した面持ちで、形のいい唇が開かれた。
「ショーン。トムとニックが、きみが女性だったと言っているんだが……」
「まさか、」
「もうバレたのか」
「ちょっ!」
ノア!? なに言ってるの!?
味方になると思って迎え入れたのに!
バッとノアの顔を見ると、とんでもないことをしでかしたのに、涼し気な無表情をしていた。
「ノア、先輩……まさか、本当に……?」
「仕方なくそう呼んでいましたが、俺の
「ノア!」
これ以上なにも言わせるものか、とノアの口を両手でふさいでから、恐る恐るアリスター団長を見る。
アリスター団長は、ぼう然とした顔をして、私と目が合うと、パッと視線をそらした。
「詳しく、説明してくれ」
「いえ……自分は
「ショーン、いや……もう、きみが言い
なんですって……。
あれかな、やっぱり手合わせしてお腹を怪我したとき、上半身全部見られてたのかな……。
さっきは非常事態でそれどころじゃなかったけど、何人に肌を見られてるの、私は。
さすがに女性として恥ずかしいのだけれど。
「その件は、本当にすまない。いくらでもわびる!」
「……」
アリスター団長に頭を下げられて、私は視線を泳がせたあと、観念することにした。
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