男装して騎士団に入ったら、2人の天才に愛されて困ってるんですが。
8,手合わせの結果と、本気の反動
手首を返して剣を振り下ろすと、アリスター団長の剣に真っ向からガードされる。
一切押し負ける気配がない団長どのに、力で勝てるとは思えない。
なら、やっぱりここは手数で勝負をしかけるしかないだろう。
私は蹴りで時間稼ぎをしながら剣を引いて、突きをお見舞いした。
「足癖が悪いのは、ノア先輩ゆずりだなっ!」
「ノアに教わりましたから!」
下から剣を弾かれて、上に投げ出された腕を胸元に引き寄せる。
すきを見落とさず、切りかかってくるアリスター団長の剣を、
勢いに負けるのを計算に入れて剣を押し出すと、予想通り“いい場所”に流すことができて、一歩踏み出す。
一瞬のすきも
「ハァッ!」
アリスター団長は大きく開いた瞳をキラキラと輝かせて、一歩、私のほうに踏み込んでくる。
正気!?
「僕はうれしいぞ」
目を細め、にぃっと笑いながら、アリスター団長はタックルで私を突き飛ばした。
「
「ぐっ……!」
こんなこともしてくるんだ、と、うしろによろめきながら、なんとか剣は前に構える。
お互いに体勢を立て直す時間となったから、追撃はなかったけれど。
私はアリスター団長が動き出す前に、重心を前に傾けて剣を振り下ろした。
そして、真っ向からガードされたのを見るや否や、力を抜いて、とんっと地面を蹴る。
体ごと回転しながらアリスター団長に切りかかると、視線が
まずい、読まれてる……!
「おや」
少々無理をして、地面に足がついたとたん、バックステップをくり返して距離をとる。
すると、アリスター団長がかがんだ姿勢で、私がいた場所に剣を振り抜くのが見えた。
危なかった……!
私は短く息を吐いて、すぅ、と空気を肺に入れてから、距離を詰めて、アリスター団長が動く前に切りかかる。
ガードする剣に触れると、跳ね返るように剣を浮かせて別方向から攻撃し。
「っ」
呼吸を止めたまま、とにかく素早さ勝負で連撃をくり出した。
キンッキンッキンッと短い金属音が絶え間なく響き、アリスター団長にかすり傷をいくつか負わせることにも成功する。
体が少し重くなったのを感じてすぐに退避すると、今度はアリスター団長が
「ふっ!」
振り下ろされた剣を受け流すと、例の、とちゅうで力を抜いて水平に切りかかってくるあの攻撃がきて、しゃがみながら剣を受け流した。
はぁっ、と荒い呼吸が漏れる。
少し疲れてきた、でもまだやれる!
私はアリスター団長を見上げて、剣を振り上げた。
「ショーンは吸収が早いなっ」
アリスター団長は笑って私の攻撃をガードすると、剣を振り下ろしてくる。
私は立ち上がりながらうしろに下がって、剣を構え直した。
アリスター団長が手首を返して切り上げてくるのを見て、受け流そうと剣を動かしたのに……。
どっと体が重くなって、思わず前にふらつく。
「なっ!?」
下から迫ってくる剣は見えても、腕がなまりのように重くて動かない。
あぁ……まだ、大丈夫だと思ったのに……。
こんなに急に疲れが襲ってくるのは久しぶりだな、なんて思いながら、私はお腹に痛みが走るのを感じた。
それが表面をかする程度で済んだのは、私の異変に気付いたアリスター団長が、とっさに手を引いてくれたからだろう。
やっぱり、あの連撃はスタミナ配分を間違えたかなぁ……。
そんなことを思いながら、私は遠のく意識と共に、どさっと倒れた。
「ショーン!」
****
気づいたときには、ベッドで寝ていた。
だるい体を起こそうとすると、お腹に痛みが走って、「いてて……」と思わずお腹を押さえてしまう。
「あー……手当、してもらったんだ」
手を離すと、破れた制服のすきまから白い包帯が見えて、肩の力が抜けた。
辺りを見れば、ここは自室のようだと分かる。
ついでに、タンスの上に置かれたメモに気づいて、傷に
[怪我をさせてしまってすまない。手当はしておいたから、今日はゆっくり休んでくれ]
隅に、“アリスター”と書いてあるのを見て、団長どのが手当してくれたんだ、と納得する。
部屋まで運んでもらって、申し訳ないことをしちゃったなぁ……。
……手当って、どこまで見られたんだろう?
制服をまくった、程度じゃなくて、脱がされた上で、だったら、胸を
「……なにも書いてないし、見られてない、よね?」
うん、きっと大丈夫だ。
もし私が女だって気づかれたら、アリスター団長は帰らずに私の目覚めを待っていただろうし。
騎士団に女性が混じっていることが判明したら、とんでもないさわぎになることは間違いない。
変にビクビクしないことが、隠し事を守り抜くためのコツでもある。
私は浮かんだ
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