ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。
エピローグ
家でゆっくりしたり、街へデートに出かけたり、
5時間目の終わりに、私たちは一足早く教室を出た。
「
「ん? 2年トップと1年トップがおそろいで、どうしたの?」
知暖先輩と階段を下りると、
“2年トップ”は仁木くんとして、“1年トップ”って……もしかして真陽ちゃんのこと?
あのあと、仁木くんは様子を見に教室まで来てくれて、知暖先輩にいやなことをされた、っていう誤解は解けたはずなんだけど。
いつもより近づきがたい、ケンカを売る直前、みたいな顔をした仁木くんは、知暖先輩をまっすぐに見て口を開いた。
「あんたにタイマンをもうしこむ。……残りは、あんたと
「え……」
「遠藤先輩のそれ、大我先輩に渡していただきます」
「ふぅん……きみたち、手を組むことにしたんだ?」
「恋は盲目ですから! とは言え、私は
妖しく笑う知暖先輩に、真陽ちゃんは元気よく答える。
“恋は盲目”って……もしかして真陽ちゃんと仁木くんって、そういう関係なの……!?
私の校章って、確か知暖先輩にあずけてたよね……?
「ははっ、おもしろいね。でも俺たち、これから大事な用があるんだ。全校生徒分の校章を集めたその行動力に免じて、
知暖先輩は学ランのえりにつけていた校章を外して、仁木くんに投げ渡した。
「
「……あぁ」
眉をひそめて私を見た仁木くんがうなずいたのを見て、ほっとする。
ケンカなんて挑まれたら、私、逃げることしかできないよ……。
「だが、俺が欲しいのは校章じゃなくて、あんたに勝ったっていう――」
「あのね、一番強いやつに勝てば最強って証明できるんだよ。覚えておきな、不器用くん?」
「……遠藤先輩は、
「うん、負けたよ。病院送りになった。だからいいでしょ? 別に俺とは戦わなくて」
「知暖先輩……」
“負けた”って……強二さんは、知暖先輩に負けたって言ってたのに。
それに病院に行ったのも、“
思わず知暖先輩を見ると、先輩は私を見てほほえんだ。
わざと、うそをついてるのかな……?
「……大我先輩、とりあえず吉田強二さんに挑みましょう」
「……分かった」
「もういいね? ……行こう、優衣」
「は、はい……それじゃあ、またね、真陽ちゃん、仁木くん」
にっこり笑って話を終わらせた知暖先輩に続いて、2人にあいさつをすると、真陽ちゃんは笑顔を返してくれて、仁木くんはうなずいてくれた。
知暖先輩とまた階段を下りて校舎を出てから、私はとなりを歩く先輩を見て首をかしげる。
「あれで、よかったんですか?」
「うん。最強の称号なんて興味ないから。俺は、優衣を守れる力があればそれでいい」
知暖先輩はほほえんで、ズボンのポケットから新品同様の校章を取り出した。
もしかして、私の校章……?
「これは誰にも渡さない。もちろん、優衣自身も」
「!」
知暖先輩は手のひらの上にある校章を見つめてから、私の肩に手を回し、ちゅっとほおにキスをする。
かぁっと赤面すると、知暖先輩は甘く目を細めて笑った。
「優衣は、どうするの? 弟くんには滝高に転校しちゃったこと、言う?」
「あ……」
私たちはこれから、
「……健たちは、家から学校に通ってるはずなので。私もお嬢さま学校で元気にやってるよ、って言おうかなと」
「そっか。じゃあ、いったん家で着替えていかないとね」
「はい。ありがとうございます、知暖先輩。一緒に行ってくれて……」
「ううん。俺も弟くんにあいさつしたいから」
「……はい」
照れながらほほえむと、知暖先輩は笑って「優衣」と甘く私を呼んだ。
キスをするときの合図だって分かって、私はドキドキしながら少し足を止めて、知暖先輩に顔を向ける。
知暖先輩は私のほおをするりとなでて、ゆっくり唇を重ねた。
「……優衣のぜんぶ、俺が守ってあげるから。安心して」
「知暖先輩……ありがとう、ございます」
ほおを赤くして、知暖先輩のYシャツのそでをきゅっとつかむと、先輩はほほえんで手をつないでくれる。
ドキドキする帰り道をたどって、電車にゆられながら従弟たちの通う学校へ向かった私は――。
「いた……! 健!」
「え、姉ちゃん!? なんで学校に……!」
「健が心配になって、様子を見に来たの。元気にしてる? 大変なことはない?」
「う、うん……てか、その人誰?」
「初めまして。俺は遠藤知暖、優衣の彼氏だよ」
「はぁ!?」
無事に弟の姿を見つけてほっとしたんだけど、知暖先輩に敵意をむき出しにする健にあたふたししながら、2人に取り合われることになってしまったのだった。
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